未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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創業400年以上の老舗酒蔵、24代蔵元の挑戦 酒粕で酒蔵の電力を100%まかなう完全循環。自然と共生した持続可能な「攻め」の酒造りとは。

文= ロマーノ尚美
写真= ロマーノ尚美
未知の細道 No.243 |10 October 2023
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#2日本で13番目に古い酒蔵

山形県南部・米沢市にある小嶋総本店は、豊臣秀吉・徳川家康などの戦国武将が活躍していた安土桃山時代、1597年に創業した造り酒屋だ。現在日本に酒蔵は1000以上あるが、江戸時代より前に創業して現存しているのはわずか17蔵。そのなかで、小嶋総本店は日本では13番目に古い酒蔵だという。

江戸時代に上杉家が米沢藩の藩主になると、小嶋総本店は御用酒屋に任命された。飢饉の年などは米を節約するために酒造りを禁じる禁酒令が出されることもあったが、小嶋総本店は禁酒令下でも酒造りを許されていたという。蔵の代表銘柄である「東光」は、米沢城から見た日の出の方角に酒蔵が位置することに由来している。

小嶋総本店。創業以来、同じ場所で酒造りをしている。

米沢は、年間積雪量が6メートルという豪雪地帯だ。吾妻山から流れ出す豊富な雪解け水は山形を縦断する最上川の源流であり、この源流は地層に浸透し、ミネラルを含んだ上品な口当たりの地下水となって蔵に辿り着く。

地下水の温度は、その土地の年間平均気温とほぼ同じだという。小嶋総本店の井戸からは米沢の年間平均気温である11度の地下水が湧き出るが、摂氏11度とは、小嶋総本店が薦める東光の飲用温度だ。

雪解け水は、田んぼを満たす水としても使われる。小嶋総本店では、酒造りと米作りの水源が同じであることを酒造りの原則のひとつとして大切にしている。

創業からずっと400年以上同じ場所で酒造りをしているなんて、本当にすごい。素直に口にした感想に、小嶋総本店第24代蔵元の小嶋健市郎さんは、「そうですね、おかげさまで、ということだと思います」と穏やかな表情で答えた。

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