未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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創業400年以上の老舗酒蔵、24代蔵元の挑戦 酒粕で酒蔵の電力を100%まかなう完全循環。自然と共生した持続可能な「攻め」の酒造りとは。

文= ロマーノ尚美
写真= ロマーノ尚美
未知の細道 No.243 |10 October 2023
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#10自然の恵み、仕込水に願いを込める

小嶋さんとの話を終えた後、小嶋総本店から歩いて数分のところにある「酒造資料館 東光の酒蔵」へと向かった。1919年に建設され1983年に廃業した酒蔵を小嶋総本店が引き継ぎ、原型を保ちながら復元して1984年にオープンした酒造資料館だ。現代では再現できない伝統的な手法で建てられた酒蔵の館内には、1500点以上の醸造用具や酒器などが展示されていて、古来の醸造文化を感じることができる。

酒造資料館「東光の酒蔵」

外の暑さを感じさせないひんやりとした館内は、まるで明治時代の酒蔵にタイムスリップしたかのよう。一棟140坪の東北最大級の白壁土蔵の中には昔ながらの酒造り空間が再現されていて、蔵人が作業をしていた雰囲気を感じることができる。

  • 仕込蔵入口
  • 酒を仕込む木桶
木桶がずらっと立ち並び、明治大正時代の仕込蔵を彷彿とさせる

資料館の最後の見学場所には、酒の仕込水が引き入れてあった。地下40mと140mの二本の井戸から汲み上げられる仕込水は、吾妻連峰の広葉樹林に浸透した雪解け水が、長い年月を経て米沢盆地の沃野に伏流水として注いだもの。400有余年に渡って清酒「東光」を生み出している自然の恵みだ。

小嶋総本店の酒造りを支えてきた仕込水

「この水が、この先何十年も何百年も湧き続け、田んぼを潤し、味わい深いお酒を生み出しますように」

神社でお神酒をいただくような神妙な気持ちで、柔らかな口当たりの水をゆっくりと飲み干した。

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