僕が取材に行ったのは、7月19日。オープン前日で慌ただしい雰囲気のなか、山内さんは静かに気持ちを昂らせているようだった。
企業に属しながら水族館を運営するのと、そのために起業して運営するのとでは、重みが異なる。よく思い切りましたね、というと、山内さんはほほ笑んだ。
「すみだ水族館の時から、仕事帰りにふらっと立ち寄る都市型水族館を作りたいと思っていました。札幌はそのコンセプトの最適地だと思うんです。まさに都市だし、洗練されているかっこいい街じゃないですか。だから、ここでやってみたかった」
250種4000点の生物を展示するアオアオ サッポロを設計する際、特に意識したのは視点。来館者に「さあ、見てください!」とプレゼンするのではなく、お客さんに寄り添い、同じ目線で水族館を楽しむことを目指した。バックヤードを公開したり、海の生き物ならではのビジュアルに着目した展示をしたり、水槽を見ながら飲食できるスペースを作ったのも、水族館巡りを趣味にしてきた山内さんならではだろう。
初年度の目標は、100万人。これは、日本の水族館の年間集客数でベスト10に入る数字だ。
「僕のイメージを超えるような、個性的な展示ができました」と自信を見せる山内さん。その視線の先には、青海原が広がっている。