未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
239

ちょっと変わった水族館、札幌に誕生 観察、発見、乾杯!水の世界に浸る時間

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.239 |10 August 2023
この記事をはじめから読む

#7「正しいと思うことをやってくれたらいいよ」

UDSでこの思いが実現することはなかった。新型コロナウイルスのパンデミックにより、水族館の運営という未知の事業に手を出す余裕がなくなってしまったのだ。

山内さんは、水族館建設に向けての設計と運営のプロジェクトが進んでいた札幌のビルを保有する会社に、この事業から手を引くかもしれないと相談に行った。自ら提案した事業を、一方的に引き下げるという手の平を返す振る舞いに、先方は怒りを露わにした。

その時、山内さんの口から、本心が漏れた。

「個人的にやりたいです」

それを聞いたビルを保有する会社の担当役員は、こう言った。

「正しいと思うことをやってくれたらいいよ」

その瞬間、山内さんの心は決まった。

「そうか、正しいことか。それは自分で水族館をやることだ」

2022年9月、「株式会社 青々」を設立。翌月にUDSを退職し、11月、正式にアオアオ サッポロの運営事業者として契約を交わした。

アオアオ サッポロが入る複合ビル「モユクサッポロ(moyuk SAPPORO)」。

「作るだけで何十億円もかかるこの水族館の運営を、設立したばかりの実績がない会社に任せてくれるのか、9月に独立した時点でも半信半疑だったので、11月に最初の振り込みがあった時は本当に嬉しかったですね」

このエントリーをはてなブックマークに追加

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。