未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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ちょっと変わった水族館、札幌に誕生 観察、発見、乾杯!水の世界に浸る時間

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.239 |10 August 2023
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#3水族館の原点に返る

照明を抑えた空間のなかに浮かび上がる「ネイチャーアクアリウム」

エスカレーターで、アオアオ サッポロの5階に上がる。薄暗いスペースに、横長の巨大な水槽が浮かび上がる。これは、水槽のなかに自然の生態系を再現した「ネイチャーアクアリウム」という手法で、趣の異なる水槽が4つある。

水槽をよく見ると、揺らめく水草にたくさんの気泡がついている。光合成によって、水草から酸素が発生しているのだ。その酸素で呼吸している色とりどりの魚たちが、なんとも気持ちよさそうに泳いでいる。集中して、というより、いつまでもぼーっと眺めていたくなる光景だ。

熱帯雨林を再現した水槽「パルダリウム」

ひと際大きい、熱帯雨林を再現した水槽は「パルダリウム」と呼ぶ。幅4メートルあるこの水槽は、世界最大級。顔を近づけると、まるでかぶりつきで熱帯雨林をのぞいているようだ。

通路を進むと、一気に明るくなる。「LIBRARY AQUARIUM / 観察と発見の部屋」では、ほかの水族館にはない分類で生き物が展示されている。

階にもいた「ヘコアユ」は、確かにぺったんこ

例えば、「ぺったんこ」。言葉通り、見た目が妙に平べったい生き物が肩を並べている。「にょろ」も、同じようににょろにょろした生き物が揃う。水槽を見た僕は、「ほんとにぺったんこだ!」「たしかににょろにょろしてる!」と見たまんま、ライターとしての語彙力に疑問が浮かぶ言葉を連発しながら、水槽にへばりついた。

各水槽には、本が置かれている。直接的に関係ある内容ではなく、その水槽から連想されるイメージに沿ったものが選書されている。なぜこの水槽にこの本? と推測するのも楽しい。

5階のテーマは「SCOPE~見えなかった世界を見つめる~」。この階の展示がユニークなのは、巷の水族館でよく見るような堅苦しい解説がないところだ。あれをじっくり読んだことがないのはきっと、僕だけではないだろう。

水族館で図鑑にあるような解説を読んでも、目の前の生き物が気になってまったく頭に入らない。そこでアオアオ サッポロは、潔くビジュアルに焦点を当てて、水槽や生き物をじっくり見てもらうことに注力している。

「いまの水族館ってどんどん進化してて、デジタルアートのクリエイターと組んだり、水槽のデザインや演出に凝ったり、どんどん右脳に響くような感覚的な展示が増えていると思うんです。でもそれって水族館に行ったというより、ゲームセンターのようなエンターテイメント施設に行ったような感覚に近いと思うんですよね。アオアオサッポロでは、そういうトレンドと差別化するために、生き物を観察する時間をちゃんと提供しようと考えました。生物を観察して、なにかを発見して、感動するという心を動かす仕組みを取り入る。ある意味で、水族館の原点に帰ったんです」

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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