富山県下新川郡
新潟県に近い北アルプス・朝日岳のふもと。小さな里山でなぜ、後発酵茶を嗜む希少な文化が育まれたのか?
最寄りのICから【E8】北陸自動車道「朝日IC」を下車
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ここ日本で「茶」といえば、何よりもまず「緑茶」を想像する人がほとんどだろう。茶を飲む習慣は、すでに中世には精神性を重んじて客人に茶を振る舞う「茶道」へと昇華され、今日まで廃れることなく受け継がれてきた。喫食文化が多様になった現代とはいえ、ペットボトルや紙パックの緑茶飲料を含めれば、「年代を問わず9割近い人が緑茶を日常的に飲んでいる」ことが明らかになっている(緑茶の引用に関する意識・意向調査/令和3年・農林水産省)。
当然ながら、茶を嗜む文化は全国津々浦々へ広まった。土地の風土が重なることで、ユニークな形となって定着した例も数知れない。数種類のお茶を飲み比べ、産地や銘柄を当てるという「闘茶」が、歌舞伎役者等によって「歌舞伎茶」として愛でられてきたことや、関西地方で正月や節分に飲まれる、茶に黒豆、昆布、梅干、山椒などの具を入れてた「福茶」。もしくは、茶道の作法を真似して楽しんだと言われる「振り茶」などが挙げられる。
振り茶は、固くなった新芽や収穫時期の遅れた茶葉から作られた「番茶」を茶筅(ちゃせん)で泡立てる、庶民的な茶の湯と言える。古来より各地で嗜まれたようだが、現在は国内のいくつかの土地にのみ残る珍しい風習になった。それらには「ぶくぶく茶」「ぼてぼて茶」「バタバタ茶」といった、どれも楽しげな名前が付けられている。