そしてなぜ私がバタバタ茶にそそられたのかといえば、番茶をベースにしたぼてぼて茶や炒り茶であるぶくぶく茶と違い、「黒茶」と呼ばれる後発酵茶を飲用しているからだ。発酵させない日本の緑茶は「不発酵茶」に分類され、酸化による発酵が進むにつれ烏龍茶や紅茶といった「半発酵茶」「発酵茶」へと変化する。対して黒茶は酸化以外の発酵作用による「後発酵茶」に分類され、その代表格は中国の「プーアル茶」である。そもそも日本で発酵茶が作られることは非常に珍しく、黒茶の産地は4ヶ所のみ。富山を除くと愛媛、高知、徳島と四国に集中している。亜熱帯植物である茶の木は四国のような温暖な地で育てることが理に適っており、茶の栽培地の北限に近く、むしろ、はと麦茶の原料となるハトムギの全国一の産地である富山で、なぜ黒茶が嗜まれてきたのか。それも6世紀に渡って飲まれてきたと知り、さらに謎は深まった。そこで私は富山へ足を運ぶことにした。