未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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新潟・糸魚川に眠る野天風呂を目指す 甦りし秘湯を訪ねて

文= Numa
写真= Numa
未知の細道 No.237 |10 July 2023
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#6洞窟の最奥から湧き出る温泉。

源泉が噴出する地点を探しに、洞窟を奥へと進む。足を保護するために水陸両用シューズは必須。

メンバーたちは手際よく洞窟内の掃除を済ませ、私を招き入れてくれた。源泉が噴出している場所を見せてくれるのだという。熱気のこもった洞穴の中から2羽のコウモリが勢いよく飛び出してきたものだから、思わず身を仰け反らせる。気分はまさに「グーニーズ」の主人公だ。

洞窟の奥行きは30メートルほど。やや滑りやすい足元に注意しながら身を屈めて奥へと進む。洞穴の最奥の岩壁から、かなりの勢いで湯が噴出している。源泉の温度は42℃前後。加水せず加温せず入浴できる、最適な温度だ。酸化したミネラルが赤茶けた泥のようになって壁や床に付着している。狭い洞穴は湿気で満たされ、一瞬で大汗をかくほど。まさに天然のミストサウナだ。

源泉は無色透明。洞窟の最も奥にある岩壁の3ヶ所から噴出していた。

一度外に出ると、彼らは土嚢で入り口を塞いだ。沢に流出する湯をせき止めて洞窟風呂にするためだ。入浴の支度を整えていると、沢から取水した水をコンロで沸かしていた船田さんが、紙コップとスティックコーヒーを私にくれた。たとえインスタントであっても、大自然の中でコーヒーを嗜むのは、この上ない贅沢である。この日は天候に恵まれたこともあり、まだ雪化粧をしたままの北アルプスがくっきりと見えている。広葉樹が生い茂る森の奥からカッコウの声が響き、足元にはウドや根曲がり竹といった山菜が芽を出している。これ以上ない、パーフェクトなセッティングだ。

1時間ほどして「もう入れるよ!」と声がかかった。入浴の合図を聞いたメンバーが続々と洞窟風呂に入る。「いやー、いい湯だ!」「最高!」という声が上がる。普段から登山ルートの安全点検や洞窟の清掃といった地道な活動を行い、ツアーの際にお客さんと一緒に入浴することはない根知未来会議の面々にとっても、「温泉開き」は特別な一日なのだ。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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