未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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ブックカフェで読書が誘う旅に出る。 1000冊の本が開く世界への扉

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.230 |27 March 2023
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#3本の「匂い」に導かれて

幅広いジャンルの本が並ぶ書棚。

京都で生まれ育った伊藤さんにとって、本は常にそばにあるものだった。特に高校1年生の時、バスケットボール部をやめてからひとりで過ごす時間が増えて、読書量も比例した。

「雑誌の『SWITCH』が隔月で発売された頃で、初めて見た時にアメリカの匂いがしてかっこいいと思って、自転車であちこちの書店を回ってバックナンバーを探しにいきました。ピート・ハミルやボブ・グリーンのコラム、ジム・キャロルの『マンハッタン少年日記』、ジェイ・マキナニーの『ブライト・ライツ、ビッグ・シティ』などを読むようになって、アメリカへの憧れを抱いていました」

世界の「匂い」を教えてくれたのが、本だった。高校卒業後、二度受験に失敗し、三度目の正直で東京の大学へ入学。アルバイトをして貯めたお金で大学1年生の夏、初めて行った海外旅行が、アメリカの東海岸、ワシントン、ボストン、ニューヨークだった。

それから海外旅行に何度か出かけた。なかでも強く印象に残っているのがインド。浪人時代、藤原新也の『東京漂流』を読んだのがきっかけで処女作にして代表作の『印度放浪』も手に取り、「いつかインドへ」という想いが芽生えた。その想いを叶えたのは、大学3年生の夏だった。

「インドに行って、なんかもっと気楽に生きるというか、もっと自分を出していい、もっと自由にやっていいんじゃないかって感じましたね。そう思えたことで、すごく気が楽になりました」

インタビューは2階のギャラリーで行った。
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。