未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
230

ブックカフェで読書が誘う旅に出る。 1000冊の本が開く世界への扉

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.230 |27 March 2023
この記事をはじめから読む

#2「旅」の本が1000冊並ぶブックカフェ

特徴的な扉が目印。

それから20年以上の時が流れ、2022年6月、脱サラした伊藤さんが開いたブックカフェ「本で旅するVia」は、JR荻窪駅から徒歩5分ほどの路地にある。大通り沿いのビルの裏にひっそりと建つ、どこにでもありそうな一軒家。こんなところに……? という非日常感から、「旅」が始まる。

不思議な雰囲気の木の扉を開けると、黒い壁に囲まれたスペースと本棚に並ぶ大量の本が目に入る。洞窟をイメージしたという黒い空間は、お客さんが静かに本を読むために存在する。ここに並ぶ本は、伊藤さんが「旅」をテーマで選書したものだ。

脱サラしてブックカフェ「本で旅するVia」を開いた伊藤雅崇さん。

ユーラシア、南北アメリカ、アフリカ、オーストラリア、南極の6大陸と太平洋、大西洋、インド洋。地球を丸ごとカバーするような紀行、歴史、文化、文学など約1000冊の書籍はほとんどが店主の蔵書で、店主の目に留まった新刊も置かれている。すべて自由に読めて、購入も可能だ。

店主が「読書するための居場所」と表現する店内には木のテーブルと座り心地の良さそうなイスがあり、ひとりで集中したい人のために革張りのチェアが置かれた半個室もふたつある。

ここは「好きなだけ、気兼ねなく、居心地よく、ゆっくり」読書を楽しめるように、席料が設定されている(1時間400円~)。お客さんも店主も気持ちよく過ごすためのシステムだ。

お客さん同士のおしゃべりや、時間帯によってパソコンの使用も禁止。ほとんど物音がしない空間で、持ち込んだ本や棚に並んだ本を手に取り、店主こだわりのコーヒーやカレーを口にしながら、デスクライトをつけて読書に浸る。お気に入りの国、行ってみたいエリア、名前すら知らなかった部族。暗い洞窟のなかにいるからこそ、想像の羽が広がる。

「Via」とは、英語で「経由」の意味。そう、この場所から世界のあらゆるところに旅ができるのだ。

黒い壁が没頭に誘う。
このエントリーをはてなブックマークに追加

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。