未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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日本唯一のユニバーサルシアター、シネマ・チュプキ・タバタはどうやって生まれたのか 田端の町の片隅に、チャップリンは流れた

文= 川内有緒
写真= 川内有緒・橘祐希
一部写真提供= シネマ・チュプキ・タバタ
未知の細道 No.218 |26 September 2022
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#7なにかの終わりは、なにかの始まり

いつか夢のバリアフリー映画館を作りたい。
そう思いながら、2008年には「シティライツ映画祭」を開始した。それは、夢の映画館を1日だけでも体験してもらう映画祭である。上映する作品のすべてに音声ガイドがつき、映画の選定から運営までも含めて視覚障害者と共に作り上げる。

「バリアフリー上映の価値を発信してもらおうということで、映画界の著名な監督をゲストに呼びましたね。山田洋次監督とか、是枝裕和監督とか来ていただいて。いま思うと、よく呼べたなと思うんですけど!」

第7回シティ・ライツ映画祭のサイト

映画祭は第7回となる2014年まで続き、それが最後となった。第7回の映画祭のテーマは「自由な風に吹かれて」で、サイトのトップページにはこんな言葉が綴られている。

"今年でさいごの映画祭
おわりは、はじまり"

実はまさにこの頃、シティ・ライツの新しい章が開かれようとしていた。映画館を設立するために動き始めたのである。物件も、東京の北区、田端駅から京浜東北線で一駅の上中里駅に見つけていた。

「天井高もあって、吹き抜けのあるデザイナー物件で、窓から改札が見えるぐらい駅に近いし、映画館にちょうどいいと思って借りたんです。それがねえ……」

結果的に言えば、そこで映画館をすることはできなかった、と平塚さんは楽しそうに笑った。

「あとになって、毎日映画を上映することは『興行』にあたるので、建築や換気装置などの映画興行の規定に沿ってないとダメだということがわかりました。いま振り返ると、そこは立地ですら映画館の条件をクリアできていなかったのです」

そこで、興行の規定に抵触しない範囲で映画上映を行う「アートスペースチュプキ」を始めた。上映のない日は、落語や瞑想の会、赤ちゃん連れのお母さんのためのミニコンサートなどを開いたり。おかげで様々な人との繋がりができた。

それでも、平塚さんは本当の映画館を作ることを諦めたわけではなかった。
2年後、今度こそ夢のユニバーサル・シアターを作るために再び動き出した。

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