磯部さんは、ジェラートに使う卵やフルーツも有機栽培や自然栽培のものを積極的に取り入れてきた。これも、自分やお客さんの安心感を高めるだけでなく、「慣行栽培の作物と比べて、果物が持っているパワーが劇的に違って圧倒的においしい」と感じているからだ。
クアットロパンキーネのショーケースを眺めると、色鮮やかなジェラートの素材を示すプレートに産地が記されている。「石垣島産パイナップル」「奄美大島産アップルマンゴー」「静岡県産有機栽培ミント」「長野安曇野のおぐらやま農場より完熟桃」「伊勢原市の3牧場の生乳」などなど、字面を眺めているだけで味を想像してワクワクするのは僕だけではないだろう。
幸運だったのは、お店の立地。ほとんどのジェラート屋さんは駅の近くや繁華街に出店するのだが、磯部さんと相棒は「ゆったりやろう」と現在の場所に決めた。その後になって、お店の近くに意外なほどに農家が多いことを知り、近隣の生産者からも仕入れるようになった。例えば、バニラに使用しているのは横浜市都筑区にある養鶏場の採れたて卵。ほかにも、近場で育てられているイチゴや梨、柿、イチジクなど旬のフルーツを購入している。
「地元でおいしいものを作っている方がいるなら、わざわざ遠くから輸送費をかけて買い取る必要はないですよね。地元の住民が知らないようなものを作っている方もいるので、僕が掘り起こして、ジェラートという形にしてあげることで紹介もできればいいなと。店を出してから気づきましたけど(笑)、鮮度よく使えるものが手に入れられる環境っていうのは、すごくいいですよ」