未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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イタリア人に認められたジェラティエーレの軌跡 ビオジェラートの甘い誘惑

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.217 |12 September 2022
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#5自然素材へのこだわり

ビスケットでジェラートを挟んだ「ビスコッティジェラート」。

この体験が大きな転機となり、およそ20年務めた会社を辞めて独立することになる。かつての同僚にその話をした時、「一緒にやろう」と盛り上がり、2017年、横浜市青葉区に立ち上げたのがクアットロパンキーネだ。

店の名前は、「4つのベンチ」という意味のイタリア語。相棒がイタリア留学していた学生時代、いつも友だちと待ち合わせする場所に4つのベンチがあり、仲間内で「じゃあ、今日もクアットロパンキーネで!」と合言葉のようになっていた。それで「いろいろな人が集まる場所になればいいな」という想いを込めたという。

店頭のメニュー板には「今日のジェラート」とある。手に入る素材によってその日のメニューが変わる。

お店をオープンするにあたり、ジェラートに使うものは自然素材にこだわった。先述したように、乳化剤、安定剤の代わりに、米粉、こんにゃく、イヌリン(菊芋などの主成分のひとつである食物繊維)を使用している。これは、決して簡単な変更ではなく、何度も試作を重ねたという。そこまでするのは、安心感と味を両立させるためだった。

「自分がよくわからないものを口に入れたくないし、売りたくないから、誰もが知っているものだけで構成しようと思ったんですよね。日本人なら、米とこんにゃく、菊芋はなじみがあるじゃないですか。それに、安定剤や乳化剤を入れると、フレーバーをマスキングしちゃうんですよ。素材そのものの風味や香りが消えちゃうんです。だから、自然のものだけで作った方が絶対においしい。それに、イタリアではだいぶ前からビオが当たり前で、僕が知っているジェラート屋さんはみんな自然素材しか使っていないので」

クアットロパンキーネのショーケース。色鮮やかなジェラートが並ぶ。
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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