ジェラートへの探究心は留まることを知らず、2016年には休暇を取って、ひとりでイタリアに向かった。会社の研修は訪問先が決まっていて、行きたいところに行けない。この時は、自分が会いたい人にアポを取って話を聞き、気になっていたお店を訪ねて食べたいものを食べた。研修の時と比べて、得られる情報量が桁違いだった。
現地滞在中に、シチリア島で行われるイタリア最大のジェラートイベント「SherbethFestival」に単身で参加した。4日間続くこのイベントでは、イタリア人を中心にジェラティエーレが50人ほど集い、一本の通りに自分のブースを出して、ジェラートを振る舞う。イタリア人は夜にジェラートを食べるので、スタートは17時。それから深夜1時、2時まで通りは人で賑わう。まさに、イタリア人の生活に密着したジェラート文化を体感できるイベントだ。
この年、日本人のジェラティエーレは磯部さんのほかにひとりだけで、あとはほぼイタリア人。食べ歩きをするお客さんも、イタリア人ばかり。この環境で自分のジェラートを売るのは勇気がいったが、この時、イタリア人の懐の深さに触れる。
「日本で開催されるお寿司の大会にイタリア人の職人がいても、あまり食べてもらえないと思うんですよ。でもイタリアでは、僕が作ったジェラートを食べに来てくれる人がたくさんいて、『すごくおいしい』と言ってくれました。会場の外を歩いている時も、イタリア人がわざわざ『すごくおいしかった』と伝えに来てくれて。自分が受け入れられたと感じて、本当に嬉しかったですね」