千葉県松戸市
JR松戸駅から千葉大学松戸キャンパスまでのおよそ1キロの道には、「食べられる道」を意味する「エディブルウェイ」という名がついている。『ヘンゼルとグレーテル』のようなお菓子でできた道路……というわけではないが、家々の前に並ぶのは確かに食べられる野菜たちだ。軒先のプランターを追いかけながら、食べられる道を歩いた。
最寄りのICから【C3】東京外環自動車道「松戸IC」までを検索を下車
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JR松戸駅の前は、コンビニやファストフード店が並ぶ、よくある駅前の光景だった。特別自然が豊かというわけでもなく、コンクリートの道路を車がたくさん通り過ぎていく。
エディブルウェイ運営メンバーの江口亜維子さん、青木恵美子さん、渡邉愛さんと待ち合わせ、駅から千葉大学松戸キャンパスに向かい始める。駅前から大学までのおよそ1キロの道がエディブルウェイと呼ばれると聞いていたが、今のところ特に変わった様子はない。
「あれ、普通の道だな」と思いながらも歩き続けていたら、ふと青木さんが「今さっき、最初のプランターがありましたね」と言った。え、どこに?! 少し前に通り過ぎた家の傍に、ワイルドストロベリーが植わった黒い布プランターを発見! 民家の軒先にちょこんと現れたので、あやうく見逃すところだった、というか一度は見逃していた。黒いプランターは目立つだろうと思っていたけれど、意外と町の光景に馴染んでいて、気を付けていないと見落としてしまいそうだ。
その後、意識して路上に目を向けるようになると、「EDIBLE WAY」とロゴが入ったプランターがどんどん視界に入ってくるようになった。道を進むにつれ、数がポツポツと増えてくる黒い布プランター。「あ、ここにも」「あそこにも!」と、イースター・エッグを探す子どものようにキョロキョロしながら進む。
これらの野菜は、すべて個人が自分たちの家で管理・栽培しているもので、エディブルウェイの運営メンバーはあくまでも、プランターと種や苗を提供しているだけ。育てる野菜も、個人が好きなものを好きなだけ育てていい。育っている野菜や果実は、あくまで個人の所有物なので、勝手に採っていくのはルール違反だ。
だとすると、エディブルウェイってなんなんだ? それぞれ好き勝手に家庭菜園するのとなにが違うのだろうと疑問が湧いてくる。
道すがらひとりの女性と出会うと、どちらともなく声をかけ会話が始まった。エディブルウェイで初期の頃から野菜を育てている方で、運営メンバーも頼りにしているそう。
「お野菜の状態はどうですか? ネットをかけられていましたよね」
「そうそう、最近は鳥がくるからね。今年はうまく育つかしら」
「いつもすごく立派に育てられてるから大丈夫ですよ!」
エディブルウェイを進むと、同じように通りすがりに野菜の様子や育て方の話をするご近所さんと、何人もすれ違った。私は普段、ここまで近所の人と会話することはない。なるほど、それぞれがお揃いのプランターで野菜を育てているというだけで一体感が生まれているのかもしれないぞ。
エディブルウェイがこの町にもたらしているものを探るべく、運営メンバーと一緒に道を歩きつつ、まずはこのプロジェクトの誕生から追いかけ始めた。