未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
205

凍結した湖上で飲み、浸かり、遊ぶ 雪と氷の銀世界「然別湖コタン」

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.205 |10 March 2022
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#8片道7時間かけても再訪したい場所

操作は簡単、でも走行中は酷寒。

仕事に戻る石川さんと別れた僕は、スノーモービルに乗ってみることにした。

1周1キロのコースを2周で、2000円。初めてだったけど、操作はそれほど難しくない。スピードも想像以上に速くて、爽快! でも、その日は何度も書くけどマイナス11度。風速1メートルで体感気温は1度下がると言われているから、時速10キロでマイナス21度。当然のように露出している顔面がヒリヒリし始めて、2週目のラストは痛かった。

すっかり身体が冷えた僕は、時計を見た。帰りのバスまで、まだ十分に時間がある。逃げ込むように駆け込んだのは、氷上露天風呂。2度目は先客がいなかったから、人生最速のスピードで服を脱ぎ捨て、お湯に滑り込んだ。ひとりでのんびり温泉に浸かっていたら、身体がじんわりほぐれてくるのがわかった。そして、片道7時間かけてきたかいがあったと思った。

ひとりで堪能するこの景色はプライスレス。

温泉から上がった僕が最後に立ち寄ったのは、アイスバー。スタッフさんに「また来ちゃいました!」と挨拶すると、素敵な笑顔で迎えてくれた。一杯ひっかけてからネイチャーセンターに戻り、石川さんに「また温泉に入って、アイスバーに寄ってきました」と報告すると、「それはずいぶん満喫しましたね」と苦笑していた。

月曜日だったこともあり、帰りのバスの乗客は僕ひとり。車窓を流れる雪景色をぼんやりと眺めながら、然別湖コタンで経験したことがほとんど「人生初」だったことに気が付いた。でも、心残りがひとつ。「次回は絶対にイグルーに泊まるぞ」という決意がメラメラと燃えあがった。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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