アイスバーと氷上露天風呂ですっかりいい塩梅に仕上がった僕は、イグルーの宿泊施設「アイスロッジ」に向かった。実は取材の日、ここに宿泊したかったんだけど、連絡をした時点ですでにシーズン中(1月29日から3月13日)すべて満室になっていた。それほど人気のイグルーがどんなところか、見たかったのだ。
アイスロッジで待っていてくれたのは、然別湖ネイチャーセンターの母体、北海道ネイチャーセンターのチーフマネージャーで、然別湖コタン副実行委員長の石川昇司さん。地元出身で、1992年から働いているベテランだ。
イグルーのなかは、すべて氷でできている。もちろん、ベッドも。宿泊者は、そのうえに雪山登山で使用する極寒用の寝袋を敷いて寝るのだけど、部屋全体が氷だと寒さに耐えられるか不安になる。でも、心配無用。
「イグルーには、湖から汲み上げてシャーベット状にした雪を箱に詰めて作ったブロックを使います。雪で作った発砲スチロールみたいなもので、空気がたくさん含まれているので、保温性が高いんです。外がマイナス30度になっても、このなかはマイナス5度前後に保たれるんですよ」
極寒用の寝袋はマイナス20度、30度でも快適に眠れるように作られているから、マイナス5度なら安心だ。試しに僕も宿泊者用の寝袋に寝させてもらったら、むしろ汗ばむぐらいの温かさ。これなら、朝まで熟睡できそうだ。
石川さんによると、気温が最も下がるのが夜明け前で、運が良ければ太陽が出てくるタイミングで空気中の水分が凍ってキラキラと光るダイヤモンドダスト、このダイアモンドダストに太陽光線が反射して浮かび上がる「太陽柱(サンピラー)」が見える。さらにイグルーに宿泊する人だけができる体験があるという。
「このイグルーは40、50センチある氷の上に立っていて、その下は湖なので、氷が気温によって伸びたり縮んだりする音が聞こえることがあります。それが神秘的な音なんですよ」
凍結した湖の上にあるイグルーは、恐らく日本で然別湖コタンだけ。ということは、このイグルーで聞く氷の音は、ほかでは聞けない音。そう考えると、なおさら宿泊したかった!