インタビューの終わりに「以前は先のことを考えていろいろ悩んでいたけど、先が見えるようになった」と石堂さんはしみじみと言い、その言葉に私もすっかり嬉しくなった。そして、その言葉のボールを受け取るように鈴木さんはこう付け加えた。
「問題をひとりで抱えてると、どんどん暗くなっちゃう。そんなとき、助けてください、といえば助けてくれる人がいるのが大事なんじゃないでしょうか。SNSで言葉を放っておしまいじゃない。人の顔を見て話すことができる場所がある方がいい。そんな場になりたい」
小さな書店を中心に、妙蓮寺の町の風景も少しずつ変わりつつある。遠くから展示や書棚を見にくる人もいれば、店番や出版に関わり、いつの間にか妙蓮寺に引っ越してくる人も出てきた。目指す場所がなかった町に「目指したい本屋」が生まれた。
それでも「町の本屋」という元々の立ち位置は変わっていない。
「町にはちょっと無駄に寄れるところがあるほうががいいんです。石堂書店なんて、フラッと入ってきて、何も買わずにフラッと帰るだけの人も多いんです。でもいろんな年代の人がこれる業種、店舗ってあんまりない。小さい子が気軽に来られる、そんな場所を続けていきたい」(石堂さんと鈴木さん)
ずいぶん長くなってしまったので、ここら辺でふたつの本屋物語もおしまいにしたい。あとは、皆さんでこの物語の「その後」を紡いでみるのはいかがだろうか。冒険研究所書店と本屋・生活綴方。魅力的なこのふたつの店は、実はそう遠くない場所に位置していて、いっぺんにめぐることも可能だから、まずは訪れるところから始めて欲しい。
そして今こそ漕ぎ出そう。読み、知り、書くという知的冒険の旅へ。