未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
202

漕ぎ出そう!読み、知り、書くという冒険へ ~冒険研究所書店と本屋・生活綴方の物語~

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
一部写真提供:荻田泰永、本屋・生活綴方

未知の細道 No.202 |25 January 2022
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#14無駄に寄れる場所

インタビューの終わりに「以前は先のことを考えていろいろ悩んでいたけど、先が見えるようになった」と石堂さんはしみじみと言い、その言葉に私もすっかり嬉しくなった。そして、その言葉のボールを受け取るように鈴木さんはこう付け加えた。
「問題をひとりで抱えてると、どんどん暗くなっちゃう。そんなとき、助けてください、といえば助けてくれる人がいるのが大事なんじゃないでしょうか。SNSで言葉を放っておしまいじゃない。人の顔を見て話すことができる場所がある方がいい。そんな場になりたい」

ギャラリースペースでは常時さまざまな作品が展示されている。取材の日は安達茉莉子さんの作品展を開催中。

小さな書店を中心に、妙蓮寺の町の風景も少しずつ変わりつつある。遠くから展示や書棚を見にくる人もいれば、店番や出版に関わり、いつの間にか妙蓮寺に引っ越してくる人も出てきた。目指す場所がなかった町に「目指したい本屋」が生まれた。

それでも「町の本屋」という元々の立ち位置は変わっていない。
「町にはちょっと無駄に寄れるところがあるほうががいいんです。石堂書店なんて、フラッと入ってきて、何も買わずにフラッと帰るだけの人も多いんです。でもいろんな年代の人がこれる業種、店舗ってあんまりない。小さい子が気軽に来られる、そんな場所を続けていきたい」(石堂さんと鈴木さん)

ずいぶん長くなってしまったので、ここら辺でふたつの本屋物語もおしまいにしたい。あとは、皆さんでこの物語の「その後」を紡いでみるのはいかがだろうか。冒険研究所書店と本屋・生活綴方。魅力的なこのふたつの店は、実はそう遠くない場所に位置していて、いっぺんにめぐることも可能だから、まずは訪れるところから始めて欲しい。

そして今こそ漕ぎ出そう。読み、知り、書くという知的冒険の旅へ。

  • 本屋の裏手の敷地では、なんと野菜づくりの活動も行われているとか!?
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
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