未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
202

漕ぎ出そう!読み、知り、書くという冒険へ ~冒険研究所書店と本屋・生活綴方の物語~

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
一部写真提供:荻田泰永、本屋・生活綴方

未知の細道 No.202 |25 January 2022
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#3未到の地を目指した人々

20世紀のはじめ、南極点はまだ人類にとって未到の地であった。
どの国の誰が最初に南極点に達するのか。ある年、その探検に挑んだのがスコット隊だった。計画されたのは、馬や動力機がついたソリを利用しながら氷河やクレクレパスを超えていく3000キロの大冒険である。

この年、ノルウェイ出身の探検家、ロアール・アムンセン隊も別のルート南極点を目指していた。アムンセンは、それ以前に積み重ねてきた北極探検での経験を生かして装備を準備し、移動手段には犬ぞりを選んだ。

ふたつの隊はほぼ同時期に南極点を目指したが、装備や移動手段は異なっており、それが二つの隊の運命を分けた。アムンセン隊は犬ぞりで順調に氷河を超え、大きな困難に遭遇することもなく南極点に到達。同じ時、スコット隊は、動力機つきのソリや馬を失ってしまい、人力で重いソリを引き続けた。

結果としては、スコット隊も南極点に到達した。しかし、その時彼らが見たものはアムンセンが立てたノルウェイの国旗だった。がっかりしたことは想像に難くない。その後スコット隊は、本のタイトルである「世界最悪の旅」と言わしめるのに十分な、地獄を絵に書いたような旅に突入する。そして凍傷や食糧不足に苦しめられながら、5人は南極の地で永遠の眠りについた。

とまあ、いくらでも書けるほどに面白いストーリーなのだが、いい加減この辺で本筋に戻らねばならない。この旅を描いた『世界最悪の旅―スコット南極探検隊』の最後ページにあるのが、荻田さんが教えてくれた言葉だ。

――探検とは知的情熱の身体的表現である――

スコットもアムンセンも、同じくまだ誰も見たことのない南極点を自分自身で見たいという好奇心を胸に、それぞれの信じる方法を追求し、凍てついた大地を超えていった。その全ての元になったのが知的情熱だ。これが冒険と読書は同じだと荻田さんに言わしめる理由であろう。

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