未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
202

漕ぎ出そう!読み、知り、書くという冒険へ ~冒険研究所書店と本屋・生活綴方の物語~

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
一部写真提供:荻田泰永、本屋・生活綴方

未知の細道 No.202 |25 January 2022
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#4こうして冒険家が生まれた

それでもアマノジャクな私は、まだ不思議だった。読書が好きならば、自分の家で好きなだけ読めばいいじゃないか。なにも書店を開いて誰かに売るなんてややこしいとをしなくても良いはずだ。そんな疑問をストレートにぶつけると、荻田さんはこう答えた。

「その理由は、自分も“場”が欲しかったんだと思います。別に群れたいとか仲間が欲しいとかってわけでもないんですけど。自分は思えばいつもひとりだったんですよね」

―――自分は、ひとりだった―――

その言葉を理解するために、ここで「冒険家・荻田泰永」の歴史を少しだけ紐解いてみたい。

荻田さんが22歳で最初に北極に行くきっかけになったのは、冒険家・大場満郎さんである。大場さんは1997年、世界で初めて単独徒歩による北極海横断に成功した人物だ。さらに1999年には、単独徒歩による南極横断を行い、北極点と南極点の両方に立った。その翌年となる2000年、大場さんは「北磁極を目指す冒険ウォーク2000」を企画し、冒険の素人である若者たちを連れて、700キロの道のりを徒歩で踏破するという挑戦を行った。その若者のひとりが、大学を中退し、何をやりたいのかがわからない荻田さんだった。

【未知の細道】No.129 職業欄は冒険家!? 山形の大自然が生んだ冒険家・大場満郎さんの「死ぬまで輝いた目で生きる」という人生の挑戦

荻田さんはたまたまテレビ番組でこの計画のことを知り、参加した。

あの時の私は、エネルギーを抱えながら向け場がわからず悶々としていたのに、このテレビの中の冒険家と呼ばれる人は、溢れるエネルギーを一方的に強く向けているように映り、その姿に羨ましさと憧れを抱いた(『考える脚』(荻田泰永著)より)

南極遠征中、ソリを引く荻田さん。(写真提供:荻田泰永)
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「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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