ビックリ仰天はまだ続く。当時、動物を狩ったり、肉をさばいたりするのに使われていたのは、割るとガラスのように鋭利になる黒曜石。三内丸山遺跡からは、北海道十勝や白滝、秋田県男鹿、山形県月山、新潟県佐渡、長野県霧ケ峰産などの黒曜石が出土している。
ほかにも、石の斧として日高地方糠平川の緑色岩と旭川市神居古潭の青色片岩が使われていたり、装身具として使われた新潟県糸魚川周辺で採れたヒスイや岩手県太平洋岸で採れた琥珀が見つかっている。そう、三内丸山遺跡の縄文人が、各地から取り寄せていたのだ。
ここでまた想像してほしい。グーグルマップで検索したら、霧ケ峰から三内丸山遺跡まで、680キロ。新潟か富山あたりまで船で行ったとしても、霧ケ峰はそこからかなり内陸だ。北海道の白滝も内陸にあり、函館まで船で行ったとしても、陸路で460キロ以上ある。
手漕ぎの丸木舟と徒歩で現地まで行き、重い石を持ち帰る。その道程を考えると、気が遠くなる。当時はきっと命がけだったはずだ。いやいや、その前になぜその地域に求める石があると知ったのか? 「白滝と霧ケ峰にいい黒曜石がある」と知るきっかけすら想像がつかない。西さんも「現代の車と船を使っても、かなり遠いですよ。すごい行動力と実行力ですね」と感心していた。