駅から歩くこと20分。
大正時代の建物をいまに残す茅ヶ崎館は、その柱や庭、家具のひとつひとつに歴史が刻まれていて、別世界にきたようだ。宿の中には外とは異なる時間が流れている。
女将の森治子さんが玄関に出てきて、「二番」のお部屋に案内をしてくださる。女将さんは、四代目のオーナーのところに嫁いできて以来、長年この旅館を切り盛りしてきたそうだ。四代目は、まさに小津安二郎監督をリアルタイムで知る人である。
治子さんは、多数の物書きやシナリオライターを見てきたらしく、部屋を去るとき「ここでお書きになる方はみんな賞を受賞されるんですよ! 頑張ってください」と声をかけてくださる。
これには、テンションがぶち上がった。
「ありがとうございます! 頑張って書きます!」
部屋の大きな窓はそのまま広い庭園につながっている。
すぐに机に延長コードとデスク用ライトをセット。お菓子やナッツも準備し、熱いお茶を淹れるとステンレスの水筒に詰める。布団はすでにひいてあるのであとは書くだけだ。
準備OK!