未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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「相撲が好きじゃけん」日本で一番相撲を愛する町で167年続く伝統の相撲大会

乙亥(おとい)大相撲を愛媛へ見に行く

文= 和田静香
写真= 和田静香
未知の細道 No.128 |25 December 2018
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#5日本で唯一のプロ対アマの対決

出番を待つプロとアマの力士たち

 続いては乙亥が誇る熾烈な戦い、5人抜きが行われる。今度は1人が続けて5人に勝たないとならない。しかもプロとアマによる5人勝ち抜バトルで、小々5人抜き、小5人抜き、中5人抜きと続き、特別中5人抜き、そこで勝った人たちにより大5人抜き、特別大5人抜きと、何度も繰り返し対戦が組まれる。いわゆる予選、本選、準決勝、決勝のような形だが、小、中、大、とそれぞれ5人抜きするごとに表彰される。その度に勧進元(スポンサー)が付いて、お米やみかんなど賞品をもらえるのだ。

 プロは8人。安芸の花、安芸乃山、湘南乃海、豊昇龍、玉金剛、納谷、玉乃龍、鬨王。招待アマチュア力士は30人。野村出身の人も多く、最年長は36才の野村高校OB岩本さん。

 また、力士たちが並んで土俵で「そろい踏み(四股を踏む)」を披露したり、大相撲と同じ装束を身につけた行司さんや呼び出しさんも登場し、実に華やかに繰り広げられる。

「そろい踏み(四股を踏む)」の様子

 土俵には次々力士が上がり、取組が進んで行く。
「東方、納谷。大相撲三段目の力士。九州場所では見事勝ち越しております。昭和の大横綱・大鵬のお孫さんでございます」
アナウンスが紹介すると、場内からは「たいほー、たいほー」の叫び声が幾つも上がる。いや、大鵬じゃないんだけど、と思うけど、1951年に大鵬もここを訪れている。その幻が見えたのかもしれない。

プロ対アマ対決、納屋の取組

 納谷が勝つと「差し替えまして、住木、中央大学1年生、野村高校相撲部OBでございます。昨年の愛媛国体決勝の組み合わせです」のアナウンスにドッと会場が沸いた。「すみき、負けるな!」の声があちこちから飛んで、ご当地の住木へ大声援だ。2017年の国体では納谷が優勝、住木が2位、豊昇龍が3位だった。

「手をついて。はっきよい!のこった!」行事さんの声が響くと、「うぎゃああ!」と悲鳴にも似た叫びがこだまし、住木の勝ち! お客さんたちは飛び上がらんばかりに大喜びだ。
「差し替えまして、豊昇龍。モンゴル出身。幕下の力士でございます。九州場所では6勝1敗、見事な成績で勝ち越しております。昨年の愛媛国体準決勝の組み合わせです」
 豊昇龍が言っていた「リベンジ」とはこれのことだ。

リベンジの一番。豊昇龍(左)と、住木(右)の取組

「手をついて。はっきよい、のこったのこった! 押し出しまして、住木の勝ち!」
「うおおおおおおおおおおおお!」 
今日一番の盛り上がり。「野村!野村!野村!」の声があがる。住木は5人抜きを達成し、勝ち名乗りと共に何やら1メートルぐらいの竹筒が与えられた。なんだろ、これ?
「これは孟宗竹に御幣紙を付けたボンデンというもので、いわばトロフィーです。お祭や奉納相撲ではこれが登場するんですよ」

孟宗竹に御幣紙を付けた「ボンデン(トロフィーのようなもの)」
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未知の細道 No.128

和田静香

1965年千葉県市川市生まれ、静岡県沼津市育ち。投稿から音楽雑誌「ミュージック・ライフ」のライターに、同じくラジオ番組への投稿から音楽評論家/作詞家の湯川れい子のアシスタントに。業務のかたわらで音楽雑誌に執筆を始める。最近では音楽のみならず、相撲を始め、エンタメ・ノンフィクションを数多く執筆。「わがままな病人vsつかえない医者」(文春文庫)、「評伝・湯川れい子 音楽に恋をして♪」(朝日新聞出版)、「東京ロック・バー物語」(シンコー・ミュージック)、「おでんの汁にウツを沈めて~44歳恐る恐るコンビニ店員デビュー」(幻冬社文庫)、「スー女のみかた~相撲ってなんて面白い!」(シンコ―ミュージック)がある。

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「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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