続いては乙亥が誇る熾烈な戦い、5人抜きが行われる。今度は1人が続けて5人に勝たないとならない。しかもプロとアマによる5人勝ち抜バトルで、小々5人抜き、小5人抜き、中5人抜きと続き、特別中5人抜き、そこで勝った人たちにより大5人抜き、特別大5人抜きと、何度も繰り返し対戦が組まれる。いわゆる予選、本選、準決勝、決勝のような形だが、小、中、大、とそれぞれ5人抜きするごとに表彰される。その度に勧進元(スポンサー)が付いて、お米やみかんなど賞品をもらえるのだ。
プロは8人。安芸の花、安芸乃山、湘南乃海、豊昇龍、玉金剛、納谷、玉乃龍、鬨王。招待アマチュア力士は30人。野村出身の人も多く、最年長は36才の野村高校OB岩本さん。
また、力士たちが並んで土俵で「そろい踏み(四股を踏む)」を披露したり、大相撲と同じ装束を身につけた行司さんや呼び出しさんも登場し、実に華やかに繰り広げられる。
土俵には次々力士が上がり、取組が進んで行く。
「東方、納谷。大相撲三段目の力士。九州場所では見事勝ち越しております。昭和の大横綱・大鵬のお孫さんでございます」
アナウンスが紹介すると、場内からは「たいほー、たいほー」の叫び声が幾つも上がる。いや、大鵬じゃないんだけど、と思うけど、1951年に大鵬もここを訪れている。その幻が見えたのかもしれない。
納谷が勝つと「差し替えまして、住木、中央大学1年生、野村高校相撲部OBでございます。昨年の愛媛国体決勝の組み合わせです」のアナウンスにドッと会場が沸いた。「すみき、負けるな!」の声があちこちから飛んで、ご当地の住木へ大声援だ。2017年の国体では納谷が優勝、住木が2位、豊昇龍が3位だった。
「手をついて。はっきよい!のこった!」行事さんの声が響くと、「うぎゃああ!」と悲鳴にも似た叫びがこだまし、住木の勝ち! お客さんたちは飛び上がらんばかりに大喜びだ。
「差し替えまして、豊昇龍。モンゴル出身。幕下の力士でございます。九州場所では6勝1敗、見事な成績で勝ち越しております。昨年の愛媛国体準決勝の組み合わせです」
豊昇龍が言っていた「リベンジ」とはこれのことだ。
「手をついて。はっきよい、のこったのこった! 押し出しまして、住木の勝ち!」
「うおおおおおおおおおおおお!」
今日一番の盛り上がり。「野村!野村!野村!」の声があがる。住木は5人抜きを達成し、勝ち名乗りと共に何やら1メートルぐらいの竹筒が与えられた。なんだろ、これ?
「これは孟宗竹に御幣紙を付けたボンデンというもので、いわばトロフィーです。お祭や奉納相撲ではこれが登場するんですよ」
和田静香