話をしているうちに招待選手たちによる取組が始まった。最初は相撲強豪高校の選手たちによる3人抜きから。休みなしに1人の力士が続けて3人に勝つと『勝利』となる。1人が3人勝ち抜くと、また次の1人が3人勝ち抜く。勝ち抜くまで続くガチで厳しい戦いがいきなり土俵で始まってビックリだ。土俵に上がる選手は館内放送で紹介される。
「西方(にしかた)鈴木、飛龍高校3年、東方(ひがしかた)、小池、野村高校三年」
2人が土俵に上がると声援がすごい。「がんばれ野村の子!」「がんばれ飛龍の子!」
「はっきよーい、のこったのこったのこった!」
「わあああああああ!」
相撲場らしい声と興奮した歓声が響く。
「寄り切って鈴木の勝ち。差し替えまして由留部、野村高校相撲部3年であります」
負けた方から、次の選手が登場して土俵に上がる。
「はっきよーい、のこったのこったのこった!」
「わあああああああ!」
「小手投げにて、鈴木の勝ち」
負けてしまった由留部くんが土俵から降りてきたところを捕まえた。
「どうでしたか?」
「いやぁ、強かったです」
「野村で生まれ育ったんですか?」
「自分は福岡です。元々兄が来ていたので僕も今は野村に住んで高校に通っています。福岡とはだいぶ違い、普段から身近に相撲があって、みんな相撲が大好きなんです」
勝った鈴木君にも話を聞いた。彼は静岡県沼津市にある飛龍高校の生徒。どうして乙亥相撲に来たんだろう?
「去年の国体で野村町に来たときに民泊させてもらい、町の人たちにお世話になりました。だから7月の豪雨災害の後、ボランティアに来たんです。今回はその縁で参加させもらっています」
由留部くんも鈴木くんも相撲が大好きだから、野村町へやって来た。鈴木君は同じ高校に通う、一緒にボランティアにも来た内モンゴルからの留学生アスハダくんや、中村くんとも共に参加していた。相撲に青春を懸ける子たちが集まる乙亥大相撲。なんだか映画にもなりそうじゃないか。
和田静香