未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
128

愛媛県西予市

愛媛県の南西部に位置する西予市・野村町。2018年7月の西日本豪雨で大きな被害を受けたその町で、167年続く相撲大会がある。元々はペリー来航の前の年から始まった神社への奉納相撲が今やプロとアマが戦う日本唯一の熱い相撲大会に!相撲好きなら一度は見たい伝統の大会へ、いざ行かん!

文= 和田静香
写真= 和田静香
未知の細道 No.128 |25 December 2018
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愛媛県西予市

最寄りのICから【E56】松山自動車道「内子五十崎IC」を下車

【E56】松山自動車道「内子五十崎IC」までを検索

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#1相撲の町?

現在は静けさを取り戻している「肘川」

 その町のことを知ったのは2018年7月、西日本を襲った豪雨災害のニュースからだった。愛媛県西予市野村町。町を流れる肘川が氾濫した大変な状況を知らせる地域に住む方のツイッターに、そこが“相撲の町”であることが書かれていた。相撲の町?

 私は相撲が大好きだ。女性の相撲ファンを最近はスー女(すーじょ)と呼ぶが、まごうことなき私はスー女。でも、野村町のことは全く知らなかった。さっそく調べてみると……。

 野村町は嘉永5(1852)年に町の大半を焼き尽くす大火に見舞われ、二度と火災が起こらないよう火伏せの神・愛宕神社を再建した。その年から『今後100年願掛け相撲を奉納します』と誓ったのが『乙亥大相撲(おといおおずもう)』の始まり。1947年に約束の100年を超えても相撲大会は開かれ続け、今では日本で唯一プロの力士と全国から招待されたアマチュア力士が闘う、相撲の一大イベントとなった。

 さらに調べると、過去には横綱・稀勢の里や曙、大関・琴欧州ら人気の力士たちも訪れて街を練り歩いたり、稽古を重ねた地元の人たちも毎年100人以上が相撲を取って、ヤンヤの大盛り上がりになるという。160年以上も独自の相撲大会を開く四国の小さな町――私は並々ならぬ相撲愛を感じ、俄然、興味が湧いた。

 しかし、今年は水害で果たして開かれるのだろうか? 行方を見守っていると「これまで166年間一度も絶やすことなく乙亥大相撲を続けてきた先人たちの想いを受け継ぎ、また西日本豪雨災害からの復興を祈願し開催いたします」というニュースが飛び込んできた。これは行かねば! 行かねばならぬ! 私は一路、愛媛へ向かった。

 野村町へは愛媛・松山空港から車で約2時間。南西へ約60キロ、山間の町だ。『乙亥大相撲』は最近では毎年、大相撲・九州場所が終わってすぐの11月末の火曜日と水曜日に開かれてきたが、今年(2018年)は11月27日のみの開催となった。


未知の細道 No.128

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

乙亥(おとい)大相撲を巡る旅プラン

予算の目安30.000円〜

最寄りのICから【E56】松山自動車道「内子五十崎IC」を下車
1日目
松山空港から西予市へ美しい山間の風景を進む。乙亥会館・駐車場に車を停めたら1日相撲三昧。夕方6時過ぎには終了する。現在、町に宿は1軒しかないが、2019年からは民泊やゲストハウスのオープンも予定されている。
2日目
松山市内へ入って道後温泉へ。車は松山駅前などに停め、路面電車で向かうのもいい。蒸気機関車モデルの「坊ちゃん列車」(1日乗車券/大人500円、小児300円)なら旅情も高まる。国の重要文化財にも指定された「道後温泉本館」は今も入浴可能(ただし2019年1月15日から改修工事が始まり、一部使用できない場合も)。市民の湯である公衆浴場「椿の湯」ものんびりできる。

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

和田静香

1965年千葉県市川市生まれ、静岡県沼津市育ち。投稿から音楽雑誌「ミュージック・ライフ」のライターに、同じくラジオ番組への投稿から音楽評論家/作詞家の湯川れい子のアシスタントに。業務のかたわらで音楽雑誌に執筆を始める。最近では音楽のみならず、相撲を始め、エンタメ・ノンフィクションを数多く執筆。「わがままな病人vsつかえない医者」(文春文庫)、「評伝・湯川れい子 音楽に恋をして♪」(朝日新聞出版)、「東京ロック・バー物語」(シンコー・ミュージック)、「おでんの汁にウツを沈めて~44歳恐る恐るコンビニ店員デビュー」(幻冬社文庫)、「スー女のみかた~相撲ってなんて面白い!」(シンコ―ミュージック)がある。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。