現在までに制作された壁画は6点だが、そのうちで今も見ることができるものは、全部で5点。すべて駅から歩いていける範囲内に点在する。
なかには、真新しいビル全体に描かれた作品もあれば、緑道に面した長さ40メートルの長い壁に描かれたものも。そこには、宇宙服のようなものを着た人、そして馬や魚がファンタジックなタッチで浮かびあがっていた。
そういえば、この街を動物園と称した彼らが生み出すアートには、狼に鳥に馬などと動物が多く登場する。これも「高円寺は動物園」と称する大黒さんたちの企みなのだろうか?
もしかしたら、この先も数々の巨大動物たちがこの街を駆け抜けていくのかもしれない。そうなったら、街の風景が変わっていって、面白いことになりそうだなとワクワクした。
「なんか、自分がやっていることは、『アートを日常に落とし込む』みたいなことではなく、既成概念や予定調和を壊すこと。自分が当たり前だと思っている日常や普段の風景も、解像度を高くしてよく見ていけば、新しい発見とか閃きがある。たとえば、実はすごく神秘的なことが起こっていたり、すれ違った人の人生がすごく面白かったり。え、こんな場所がこんなヘンなところがあるのかとか。僕がアートを使ってやりたいのは、そういう“ショック療法”のようなものなんです」
川内 有緒