未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
119

高円寺に出現した謎の巨大壁画を探せ!

街の“予定調和”を崩すアート

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
未知の細道 No.119 |10 August 2018
この記事をはじめから読む

#07街を駆け抜ける動物たち

長い壁に幻想的な世界が広がる。作者はSHOGO IWAKIRIさん。

 現在までに制作された壁画は6点だが、そのうちで今も見ることができるものは、全部で5点。すべて駅から歩いていける範囲内に点在する。
 なかには、真新しいビル全体に描かれた作品もあれば、緑道に面した長さ40メートルの長い壁に描かれたものも。そこには、宇宙服のようなものを着た人、そして馬や魚がファンタジックなタッチで浮かびあがっていた。

 そういえば、この街を動物園と称した彼らが生み出すアートには、狼に鳥に馬などと動物が多く登場する。これも「高円寺は動物園」と称する大黒さんたちの企みなのだろうか? 
 もしかしたら、この先も数々の巨大動物たちがこの街を駆け抜けていくのかもしれない。そうなったら、街の風景が変わっていって、面白いことになりそうだなとワクワクした。
「なんか、自分がやっていることは、『アートを日常に落とし込む』みたいなことではなく、既成概念や予定調和を壊すこと。自分が当たり前だと思っている日常や普段の風景も、解像度を高くしてよく見ていけば、新しい発見とか閃きがある。たとえば、実はすごく神秘的なことが起こっていたり、すれ違った人の人生がすごく面白かったり。え、こんな場所がこんなヘンなところがあるのかとか。僕がアートを使ってやりたいのは、そういう“ショック療法”のようなものなんです」

このエントリーをはてなブックマークに追加


未知の細道 No.119

川内 有緒

日本大学芸術学部卒、ジョージタウン大学にて修士号を取得。
コンサルティング会社やシンクタンクに勤務し、中南米社会の研究にいそしむ。その合間に南米やアジアの少数民族や辺境の地への旅の記録を、雑誌や機内誌に発表。2004年からフランス・パリの国際機関に5年半勤務したあと、フリーランスに。現在は東京を拠点に、おもしろいモノや人を探して旅を続ける。書籍、コラムやルポを書くかたわら、イベントの企画やアートスペース「山小屋」も運営。著書に、パリで働く日本人の人生を追ったノンフィクション、『パリでメシを食う。』『バウルを探して〜地球の片隅に伝わる秘密の歌〜』(幻冬舎)がある。「空をゆく巨人」で第16回開高健ノンフィクション賞受賞。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。