東京都杉並区
東京のある街に巨大壁画が次々と出現してるらしい!? そんな噂を聞きつけて向かったのは、東京の高円寺。あのカオスな街に壁画って、なんだか面白そうな組み合わせ……とその仕掛け人に話を聞くべく向かったのは、街の片隅にあるちょっと変わったホテル。「街の予定調和を壊したい」とその人は語るのだが、その真意とは!?
最寄りのICから【C2】首都高速中央環状線「中野長者橋」を下車
最寄りのICから【C2】首都高速中央環状線「中野長者橋」を下車
東京に住んでいる人だけなのかもしれないけれど、「高円寺」と聞くと、あるイメージが浮かんでくる。ディープ、混沌、ライブハウス、古着屋、サブカル……。
「よく『沼地』って言われます。ハマっちゃうと出られない。30歳を超えたら出ないとマズイ、みたいに言われる街です。僕にとっての高円寺は動物園みたいですね。ライオンもいるしウサギもいるし、鳥もいる」
長年この街に住むアートディレクターの大黒健嗣(だいこくけんじ)さんは、愛おしむような表情でそう語った。大黒さんは、高円寺ではなかなか知られた存在で、オルタナティブスペース・AMPcafeの運営をしたり、また銭湯「小杉湯」の隣のアパートで、アーティストインレジデンスの『アーティスト in 銭湯』をプロデュースしてきた。長髪、短パン、ヒゲ姿でこの街を日々歩きまわる彼の愛称は「あんちゃん」。
ハマッちゃうと出られない動物園なんて、なんだか楽しそうですねえ。
「そうそう、若い人たちがやっている個人店も多いんだけど、だいたい利益度外視で、ただ自分が見せたいから何かを集めて売ってるとか、そんな感じ。だから、飲み歩きもするんだけど、お酒が好きだから飲みにいくというよりは、その店のボスに会いにいく」
ともすれば、この街から出ることなく一日が完結することもあるという大黒さんにとって、街は巨大な遊び場であり、仕事場であり、ホームタウンでもある。
「じゃあ、高円寺にいると安らぐんですね?」と確認までに聞いてみると、「そりゃあ、かなり安らぎますねー」と大黒さんは満足げに答えた。
そういう彼自身も、間違いなく「高円寺動物園」の仲間のひとりだろう。彼は、色々なものをこの街に生み出してきたわけだが、今回特に話を聞きたいのはふたつ。
ひとつ目はホテルで、ふたつ目は数々の壁画である。
まずは、ちょっと変わったホテルの話から始めたい。
川内 有緒