未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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プロジェクトFUKUSHIMA! の次なる挑戦

「清山飯坂温泉芸術祭」ができるまで

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.116 |25 JUNE 2018
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#5アサノさんの展示ツアー!

企画チームの一人でもある美術家・中崎透さんの「Like a Rolling Riceball」を見る。

 さて予想以上においしいカレーに大満足したところで、いよいよアサノさんと展示ツアーに。「まず上演時間が決まってる作品から行きましょう! ちょうど1時から大友良英さんの作品が始まります、急ぎましょう!」と広い館内を移動する。

 たどり着いたのは広間。以前はきっと宴会場だったのだろう。たくさんのお客さんが座って待っていた。やがて広間は暗くなり、幕が開いた舞台の奥には、さまざまな家電製品がずらりと並んで、色とりどりのライトで輝いている。音楽家・大友良英さんのサウンドインスタレーション作品「バラ色の人生」だ。
 舞台袖にいる男性が、鑑賞の説明をしてくれた後、上演が始まった。たくさんの家電が不意に動き出して奏でるノイズと、名曲「バラ色の人生」のメロディが混じり合う。暗闇に目を凝らすと、どうも先ほどの男性が、なにかを操作しているようである。いったいどんな仕組みなのか……。
 上演後に先ほどの男性、渡部和彦さんに聞いてみることにした。渡部さんは以前から「プロジェクトFUKUSHIMA!」に関わっているメンバーだ。なんと渡部さんは大友さんからこの作品の操作方法を教わり、たくさんの家電のスイッチを手動で操作して上演しているのだという! 他にもあと二人、この作品を動かせるスタッフがいて、会期中はその3人で上演を切り盛りするらしい……。なんともすごい人力のシステムである。

上演後の「バラ色の人生」を、近づいて見る。舞台袖にはたくさんのスイッチとコードが複雑に絡み合っていた!

 さらに鑑賞ツアーは続く。旅館「清山」は、増築を繰り返した迷路のような建物と昭和レトロな風合いが特徴だ。8000㎡にもなる旅館の敷地内には、先ほどの広間のほかにも大広間やバーやゲームコーナー、外には露天風呂、室内プール、ウォータースライダー、戦争資料館まである。もはや旅館というよりレジャーランドだ!

  • 温泉旅館ならでは! 作品鑑賞の合間に足湯もできる。ここで仕事中の企画チームの一人、坂口さん。
  • アサノさんの作品を撮影するお客さん

 山岸さんやアサノさん、中崎さんたち企画チームは最初、休業中のこの旅館の一部をうまく使って芸術祭ができればいいな、と考えていたのだ、という。しかし蓋を開けてみると、あれよあれよと参加アーティストたちが集まり、結局は客室とメインの施設のほとんどに、作品が設置されることになった。その展示数は、なんと33組。展示の全容が決まったのは、芸術祭オープンのわずか数日前のことだった。

人気漫画家、しりあがり寿さんの作品


未知の細道 No.116

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

飯坂温泉&「フェスティバルFUKUSHIMA!2018」を楽しむ旅プラン

予算の目安15000円〜

最寄りのICから【E4】東北自動車道「福島飯坂」を下車
1日目
福島市の街なか広場で行われる、野外音楽フェス「フェスティバルFUKUSHIMA! 2018」(15:00-20:00)を楽しもう。ライブを楽しむもよし、17時頃から始まる「盆踊り」に参加して一緒に踊るもよし!
お腹が空いたら「清山飯坂温泉芸術祭」にも参加していたカレー屋「笑夢」なども出店予定なので、ぜひ探して食べてみよう!
宿泊、食事は飯坂温泉街へどうぞ。
2日目
飯坂温泉街には地元の人も楽しむ9つの共同浴場があるので、日中に巡ってみよう。
夕方からは引き続き「フェスティバルFUKUSHIMA! 2018」の2日目へ!

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。