未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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プロジェクトFUKUSHIMA! の次なる挑戦

「清山飯坂温泉芸術祭」ができるまで

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.116 |25 JUNE 2018
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#2プロジェクトFUKUSHIMA! から始まった

 黒い玉石が敷かれた広々とした玄関で、受付スタッフが出迎えてくれる。靴を下駄箱に入れて、スリッパに履き替える。広いロビーを見渡すと、お客さんで賑わうカフェや、芸術祭の資料や映像のブース、そして門の下にはためいていたものと同じ、あの大きなパッチワークが、壁や床など、そこかしこに敷き詰められている。

 するとロビーにいた男性が声をかけてくれた。『清山飯坂温泉芸術祭』の総合ディレクター、山岸清之進さんである。姓と名前から、お気付きかもしれない。そう、この旅館「清山」は、山岸さんの実家なのだそうだ。旅館を継がなかった山岸さんは、普段は東京に住み、番組プロデューサーとして働いている。休日にはこうして東京と福島を往復しているのだという。
 そして山岸さんは、さらにもう一つの顔がある。それは『プロジェクトFUKUSHIMA!』の代表だ。

山岸清之進さん

 では『プロジェクトFUKUSHIMA!』とはいったい何なのか?
 それは東日本大震災にさかのぼる。2011年3月11の大地震と津波、そしてそのすぐ後に東京電力福島第一原子力発電所の事故が起こった。突然、福島に降りかかった、あまりにも厳しい現実の中で、山岸さんは東京に住む同郷のアーティストと連絡を取り合っていた。以前、テレビ番組で一緒に仕事をしていた福島市育ちの音楽家・大友良英さんである。
 二人は原発事故を境に、故郷の福島が、いつの間にか「FUKUSHIMA」としてネガティブに全世界に発信されていくのを憂え、そして憤っていた。そんな中、山岸さんと同じように大友さんと連絡を取っていた、二本松市生まれのロック・ミュージシャン、遠藤ミチロウさんが「福島に1万人を集めて音楽フェスをやろう!」と言い出したのだった。
 この混乱の中、果たしてそんなことができるのだろうか? しかし他にも福島ゆかりのアーティストや県内外の有志が集まり、大友良英さんと遠藤ミチロウさん、詩人の和合亮一さんを共同代表として、『プロジェクトFUKUSHIMA!』が立ち上がった。
 そして半年後の8月に福島市で大規模な音楽フェス、『フェスティバルFUKUSHIMA!』を行うことを目指し、「震災でネガティブになったFUKUSHIMAを文化の力でポジティブに転換していく」ことが宣言されたのであった。


未知の細道 No.116

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

飯坂温泉&「フェスティバルFUKUSHIMA!2018」を楽しむ旅プラン

予算の目安15000円〜

最寄りのICから【E4】東北自動車道「福島飯坂」を下車
1日目
福島市の街なか広場で行われる、野外音楽フェス「フェスティバルFUKUSHIMA! 2018」(15:00-20:00)を楽しもう。ライブを楽しむもよし、17時頃から始まる「盆踊り」に参加して一緒に踊るもよし!
お腹が空いたら「清山飯坂温泉芸術祭」にも参加していたカレー屋「笑夢」なども出店予定なので、ぜひ探して食べてみよう!
宿泊、食事は飯坂温泉街へどうぞ。
2日目
飯坂温泉街には地元の人も楽しむ9つの共同浴場があるので、日中に巡ってみよう。
夕方からは引き続き「フェスティバルFUKUSHIMA! 2018」の2日目へ!

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。