未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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プロジェクトFUKUSHIMA! の次なる挑戦

「清山飯坂温泉芸術祭」ができるまで

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.116 |25 JUNE 2018
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#4フェスから芸術祭へ

大風呂敷とコラボして展開する「Island in My Mind」岩根愛

 さて盆踊りや音楽フェスティバルなど、活動の中心に音楽を据えてきた『プロジェクトFUKUSHIMA!』だったが、「実は当初から、美術もずっとやりたいと思っていたんです」と山岸さんは言う。1日限りの祭りだけではなく、期間の長い展示をベースとした新しい取り組みをできないものか……、企画メンバーたちは、そんなことを思い描いてた。

 山岸さんの実家である旅館「清山」は、福島市街地からも近く、これまで『プロジェクトFUKUSHIMA!』の運営拠点のひとつとなっていた。また、さまざまな文化イベントの会場としてアーティストや市民が訪れる場でもあった。『プロジェクトFUKUSHIMA!』にとっても、大切な場所だった「清山」だが、施設の老朽化などにより、去年から休館することになってしまった。
 建物というものはいざ使わなくなると、どんどん朽ちてしまう。それなら思い切って、今ここで、前からやってみたかった芸術祭をやってみようじゃないか! 何より、『大風呂敷』という美術的なアイコンも、すでにある。
 これまでは世界に向けて、福島県内外で大規模な音楽フェスティバルを展開してきた『プロジェクトFUKUSHIMA!』。だが今度は「実家」という身近で個人的な場所から、新しいプロジェクト『清山飯坂温泉芸術祭』が走り出したのだった。

アサノコウタさん

「自分たちの芸術祭がついにできて、僕らも嬉しいんですよ! これまでいろんな芸術祭に呼ばれてフェスティバルをやっていたときも、うらやましいな、僕たちもいつか芸術祭をやりたいな、とずっと思っていましたから」
 そう言うのは、福島市在住の建築家で『プロジェクトFUKUSHIMA!』の企画チームのひとりであるアサノコウタさんだ。アサノさんは、フェスティバルでの櫓の制作チームのリーダーでもあり、今回は作品も出品している。
 今日はアサノさんが、この芸術祭の鑑賞ツアーをしてくれるという。アーティストの解説付きでツアーをしてもらえるのは、ぜいたくなことで、ありがたい!

 でもその前にひとつ、気になってしょうがないものが、アサノさんの後ろにあった。カレー屋さんである。インタビュー中から、とてもいい匂いがしていて気になっていた。これは絶対においしいに違いない。私と森山さんは、ツアーの前にまず腹ごしらえすることにしたのであった。

大風呂敷を背にする出張カレー屋さん「笑夢」。毎年8月に行われる「フェスティバルFUKUSHIMA!」にも、オープンしているとのこと。


未知の細道 No.116

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

飯坂温泉&「フェスティバルFUKUSHIMA!2018」を楽しむ旅プラン

予算の目安15000円〜

最寄りのICから【E4】東北自動車道「福島飯坂」を下車
1日目
福島市の街なか広場で行われる、野外音楽フェス「フェスティバルFUKUSHIMA! 2018」(15:00-20:00)を楽しもう。ライブを楽しむもよし、17時頃から始まる「盆踊り」に参加して一緒に踊るもよし!
お腹が空いたら「清山飯坂温泉芸術祭」にも参加していたカレー屋「笑夢」なども出店予定なので、ぜひ探して食べてみよう!
宿泊、食事は飯坂温泉街へどうぞ。
2日目
飯坂温泉街には地元の人も楽しむ9つの共同浴場があるので、日中に巡ってみよう。
夕方からは引き続き「フェスティバルFUKUSHIMA! 2018」の2日目へ!

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。