未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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栃木県益子町

栃木県益子町といえば、ぷっくりとした分厚い器の益子焼で有名なものづくりの町。町を見回せば、店の外にも中にも焼き物が並ぶ。そんな焼き物が有名な町で、静かに糸を紡ぐ染色・織物職人がいるのをご存知だろうか。紡いだ糸を草木で染めて織るという彼女に会いに益子に出向いた。

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.111 |10 April 2018
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栃木県益子町

最寄りのICから【E50】北関東自動車道「真岡」を下車

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#1焼き物の町に住む織物職人

秋葉原から1日5本程度出ている益子行きバス「やきものライナー」

 秋葉原からおよそ2時間。「やきものライナー」という直通バスを降りると、あたりは焼き物の店だらけ。「益子焼」の文字が至る所に掲げてある。栃木県益子町は、江戸時代から続く陶器の産地。ゴツゴツとした分厚さが特徴の益子焼が有名で、年に2回行なわれる陶器市には全国からおよそ60万人もの人が集まる場所だ。

先に欲しい器をイメージしてから行ったほうがよさそうだ。

「せっかくなら陶器市に来てみてほしいけどね、人が多すぎて陶器を見る余裕もないかもしれない」

 最初に入った益子焼のお店の人が、そう言って苦笑いしたほど。重たそうな益子焼の器を手にとって驚いた。大振りな見た目からは想像していなかった軽さだ。

 今、我が家はどんな食器が足りていないか……そんなことを考え始めてからハッとした。そうだ、今回は陶器を買いに益子町まで来たのではなかった。益子町で暮らすという、染色・織物職人さんに会いに来たのだ。話によれば、彼女は綿から自分の手で糸を紡ぎ、身の回りの植物で染めたものを織るという。

 陶器の産地というイメージの強い益子町に、染色・織物職人が住むのはなぜだろう。「ものづくりの町」としての益子町をもっと知りたい。そして自然から織物を作り出す彼女に会いたくて、私は益子焼を置いて、店の外に出た。

遠くからでも目に入る巨大タヌキは、益子焼窯元共販センターにいる
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未知の細道 No.111

ウィルソン麻菜

1990年東京都生まれ。学生時代に国際協力を専攻し、児童労働撤廃を掲げるNPO法人での啓発担当インターンとしてワークショップなどを担当。アメリカ留学、インド一人旅などを経験したのち就職。製造業の会社で、日本のものづくりにこだわりを持つ職人の姿勢に感動する。「買う人が、もっと作る人に思いを寄せる世の中にしたい」と考え、現在は野菜販売の仕事をしながら作り手にインタビューをして発信している。刺繍と着物、野菜、そしてインドが好き。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。