「太陽の塔」にも顔がある。一見、アンニュイな顔をしているのだが、怒っているように見えたり、笑っているように見えたり、さまざまな表情を見せてくれる。まるで眺めているぼくの、その日の感情を映し出しているのではないかと思うくらいに。もしかすると、新発田市の住人にとってニコタンの顔も同じかもしれない。
しかし、一見さんである旅人にとっては別の意味で表情を変える。それぞれが置かれているロケーションや背景がまるで違うのだ。
住所:新潟県新発田市中曽根町3-13-4
新潟市から新発田市、そして山形県へと続く国道7号線。新発田の中でも繁華な通りに、2体の背中合わせのニコタンがいる。運転席からニコタンと目が合うのだが、新潟市内に向かう際には「行ってらっしゃい」と、その帰り道では「おかえりなさい」と話しかけてくれるようである。
住所:新潟県新発田市豊町1-4-23
JR新潟駅から電車に乗ること35分。新発田駅に到着する直前に車窓から見えるニコタン。久しぶりの帰省なら郷愁もひとしおだろう。旅人にとっては「新発田へようこそ」と言っているようでもある。新発田ガス本社もここにある。
住所:新潟県北蒲原郡聖籠町藤寄3147
緑色の「ニコタン」にはガールフレンドがいる。桃色の「モモタン」である。現時点ではニコタンとモモタンが同時に見られるスポットはここだけ。遠くからでも目立つので、横顔が並んで見えるポイントなど撮影スポットを探すのもオツ。Google Earthで探すのも楽しい。
住所:新潟県胎内市清水9-148
ここではニコタンに最接近できる。数値上は①のニコタンが最大だが、近くで見られるぶん、こちらのほうが大きく見える。ニコタンの目は「ハ」の字になっていて、その角度がカワイイを左右するのだが、巷ではこのニコタンが一番だと噂されている。違いが分かるあなたはニコタンマスターに違いない。
住所:新潟県胎内市築地3266
④から6kmほど離れた場所にモモタンが。最近まで緑色のニコタンだったが、近隣の子供たちにアンケートをとったところ、「モモタンがいい!」という声が多く、ピンクに塗り替えることになったという(写真は背中だが顔もある)。塗り替えはメンテナンスもかねて10年に1度。超音波検査までして破損……いや、怪我がないかチェックするそうだ。
こうして書いてもあっという間だが、車で3時間もあればコンプリートできる「ニコタンGO」。その途中で、海に浮かぶ謎の施設があった。聞いたところによると、これが採掘所。新潟県では石油を掘ると天然ガスも吹き出すケースが多いらしく、原油は国内生産の63.9%、天然ガスは国内生産の77.1%。日本一のガス地帯にニコタンは立っているのである。
地元の方の投稿によれば、雪の日にはこんな表情になることも。どこまでも憎めないニコタンだが、ガスタンクに顔を描くようになったキッカケは何だったのだろうか。
ライター 志賀章人(しがあきひと)