未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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ショーケースにずらりと並ぶ自家製ハムが圧巻! 「ここだけ」のハムの味を求めて全国からファンが集まる豚のレストラン

文= ロマーノ尚美
写真= ロマーノ尚美
未知の細道 No.266 |10 October 2024
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#9故郷の山形で、ハムでやっていく

独立しようと思っていた35歳を過ぎ、佐竹さんは悩んでいた。イタリア郷土料理は東京に数えきれないほどあるし、東京での生活が好きになれない。

独立したいんだ、と口にする息子に、佐竹さんのお父さんは電話口で尋ねた。「山形って選択はないのか」。それまで一度も山形に帰ろうと考えていなかった佐竹さんの悩みの霧がぱぁっと晴れた。物価が安く新鮮な食材が手に入りやすい故郷の山形の方が、やりたいことができる。イメージがぶわっと湧いてきて腹が決まった。

「ハムは一回作っちゃえば切って出すだけでしょ。楽をしたくてハム作りを始めたんですけど、まったく楽じゃなかったですね」

2012年11月に山形市七日町で「IL COTECHINO」をオープンさせた当初、佐竹さんはイタリア農家式のナチュラルなハム作りを目指していた。だがイタリアと日本では気候、特に湿度が大きく異なる。熟成の仕方が悪かったため虫が湧き、その年の生ハムを全部捨てたこともあった。

試行錯誤を繰り返した佐竹さんは、設備に投資してハム作りを管理型に切り替えた。湿度と温度の管理をしっかりしたことで品質が安定したハムを一定量出せるようになったのは2018年、開業してから6年経っていた。

同年、佐竹さんは思い切ってコースメニューから魚を外す。仕入れや下処理が大変な魚料理を出さず、「ハムを中心に肉と野菜のメニューでやっていく」と決めたからだ。この決断がお客さんに受け、「ハムの専門店」と取材が増え、より注目されるようになった。

2020年9月に移転した山形市あこや町の現在の店舗には、店内の大型ショーケース以外にも4つの冷蔵設備がある。適切な温度・湿度で管理されたハムたちは、お客さんが増えても佐竹さんが「楽」できるようにと、乾燥・熟成されながら出番を待っている。

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