専門学校卒業後、学校の経営母体が運営するレストランで働くうちに、少しずつ「真面目に料理をやろうかな」という気持ちが芽生えてきた。
料理をテーマにしたバラエティー番組『料理の鉄人』が一世を風靡したことで、当時は「フレンチの鉄人」「和食の鉄人」「中華の鉄人」として名を挙げるスターシェフが増えていた。
「俺もちょっと修行すれば『料理の鉄人』ぐらい出られるだろう」
根拠のない自信で専門学校の先生に修行先の紹介を頼んだ佐竹さんだったが、最初に訪れた都内の有名レストランを1日で離脱する。朝早くから夜遅くまで休憩なしの厨房を見て、「こんな生活をするのは嫌だ」と思ったのだ。
料理の勉強もレストラン勤務も「やーめた」と放り投げ、予備校時代の仲間たちとアルバイトと飲み会に明け暮れる。クラブで知り合った友人たちに感化されて、メーキャップアーティスト学校に通ったこともあった。
自堕落なフリーター生活を1年半続けるうちに、仲間はひとり、またひとりと進路を決めていった。遊ぶ友だちがどんどん減り、新しいグループを作っても、みんな自分より若い。
「あれ、俺、こんな生活しててもいいのかな」
急に不安に襲われた佐竹さんは、料理の世界に戻る決心をする。頭を坊主にし、料理以外の付き合いをきっぱり断ち切って。
「今度こそ真面目にやります、どこか紹介してください」
専門学校卒業後に勤めたレストランに行き、ツテを頼って頭を下げた。