未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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秋田県秋田市

2024年5月29日に開催された、日本一の回転寿司職人を決める「第9回全日本回転寿司MVP選手権」。全国から17人の腕利きが集ったこの大会で、優勝したのは秋田県内に2店舗を構える太助寿司の職人、永田昇さんだった。なぜ、地域密着型のローカル店から優勝者が生まれたのか? この謎を解くために、寿司を食べに……いや、取材に行った。

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.261 |25 July 2024
  • 名人
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秋田県秋田市

最寄りのICから【E7】秋田自動車道「秋田中央IC」を下車

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#1秋田市の回転寿司店に行列ができる理由

本店で「永田昇、渾身の一皿」として販売されている「日本一の握り 心」(792円)。

6月末の土曜日、秋田県秋田市にある回転寿司店「太助寿司」は賑わっていた。6時半ごろ店に入ると、すでに待っている人がいる。ウェイティングリストに名前を書いて数分後、案内された席に座ると注文を書く紙があった。気づけば、レーンに乗って流れている寿司はほとんどない。この時間帯、レーンの内側にいる3人の職人さんが注文に応じて寿司を握り、各席に手渡していた。

僕は店内に貼られたメニューを見て、右から順に活まだい、鮮あじ、生ホタテ、北寄貝、活タコを注文した。最初に届いたのは、北寄貝。僕が住む東京の回転寿司では、まず目にすることがないネタだ。寿司をたらふく食べると幸福感で満たされる僕は、まずお皿に3貫載っていることに驚いた。回転寿司といえば基本的に2貫、高いネタは1貫も珍しくない。なんてお得!北寄貝の寿司を醤油にちょんちょんとした後、一気に頬張る。コリっとした歯ごたえのなかに、海の潮の香りと独特の甘みが広がる。うまい!

  • 身がぷりっぷりの生ホタテ。
  • 3貫あってお得な北寄貝。
  • 珍しいいぶりがっこの巻物。
  • めかぶと納豆のねばねば軍艦。

太助寿司は八郎潟にもう1店舗を構える、秋田ローカルの回転寿司店。メニューには、秋田名物の漬物、いぶりがっこを使った巻物や、めかぶの軍艦など珍しいネタもある。いぶりがっこの巻物は歯ごたえのあるスモーキーな風味で、めかぶの軍艦はツルっとのど越しがいい。どちらも初めての口当たりだ。普段から回転寿司によく行く僕は、ほかにも都内で食べられないようなネタを中心にたくさんの寿司を注文して、味覚の細胞フルスロットルで堪能した。

……こうして僕が風船のように腹を膨らませ、脳内の幸せホルモンに浸っている間も、店は混み続けていた。後日、取材の際に聞いたところによると、現場の肌感覚では6月に入ってから平日は従来の20~30%増、週末には「約2倍」のお客さんが訪れているという。

そのお目当ては、永田昇さん。5月29日に東京・新宿で開催された日本一の回転寿司職人を決める「第9回全日本回転寿司MVP選手権」で優勝した太助寿司の職人だ。2日後に永田さんの取材を予定していた僕は、視察を兼ねて寿司を食べに来たのである。お会計の時、皿の数は16皿に達していた。ワオ!

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。