2017年5月、23歳の永田さんは社長、店長とともに上京し、新宿の四谷区民ホールで開催される大会に臨んだ。初出場で社長、店長も同伴しているという状況にプレッシャーを感じそうなものだが、「あんまり緊張しないタイプなんです」。
「ほかの職人さんとは大会当日に初めて顔を合わせるので、名刺交換しながら挨拶をして。ライバル意識は、まったくありません。みんなで仲良くやりましょうっていう感じですね」
トップを狙うでもなく、気後れするでもなく、自然体で臨み、6位入賞。本人も想像しなかった順位ながら、「意外と上にいけるんだな。まあ、たまたまか」と思っていたそうだ。この鷹揚とした雰囲気は、永田さんの人柄からくるものだろう。しかし、2018年に参加した2回目、2023年に参加した3回目も同じ6位に終わると、悔しさを感じるようになった。
「さすがに3回連続で6位になると、自分はこれ以上、上のレベルにはいけないのかなって思いますよね。自分としては、1年目よりすべてにおいて成長しているつもりだから」
社長と店長は、そう感じていなかったようだ。3回目の挑戦が終わった後、「来年も出るよ」と言われた。思い浮かんだのは、「もう、おれじゃなくていいんじゃないか」。その言葉を飲み込んで、気持ちを切り替えた。
そして2024年の年が明けた頃から週に1、2回のトレーニングを再開。3回目の大会で握りのスピード不足を感じた永田さんは、課題克服に向けてスタートを切った。迎えた5月、4回目の挑戦はかつてないほど気合いが入っていた。
「上からは、もうこれが最後だよと言われていたので、ちゃんとやらなきゃなと。常連さんからも、これまで以上に応援の声をかけてもらいましたし、今回初めてお店の従業員からお守りをもらったんです」