2013年、18歳の見習いの仕事は仕込みを教わるところから始まった。最初は、ホタテを切るところから。お店が開店すると、回転レーンの内側に入って軍艦の作り方を学んだ。なにより苦手だったのは、接客だ。
「お客さんも見ながらする仕事なんですけど、最初の頃はずっと下を見てました。人見知りだったんで。よく、前向けって怒られてましたね」
少しずつできることが増えていって、魚の仕込みを任されるようになり、寿司を握るようになった。職人の世界は、「技術は見て盗む」と聞く。やっぱりそういう感じなんですか? と尋ねると、「そうですね」と頷いた。
「あの人、こういう動きしてる、 じゃあちょっと真似してみようという感じです。それで自分に合うようだったら、それを続ける。いいところはどんどん盗んでいかないと」
働き始めて3年経つと、ようやく余裕が出てきた。常連のお客さんから「頑張ってね」と声をかけられたり、ほかの職人が握った寿司でも、お客さんがなにも言わず、頷きながら食べている姿を見ると、やりがいを感じるようになった。
永田さんが「ひと通り仕事をおぼえた」と自信をつけたのは、5年目。この年、社長から初めて「全日本回転寿司MVP選手権」の出場を打診されたというから、社長も同じ見立てだったのだろう。
2014年に初回が開催されたこの大会は、握りや海苔巻きの技術、魚の知識や接客技術などが総合的に評価される。日本回転寿司協会の会員が参加可能で、永田さんが参加した第4回は全国から17名の職人が集った。
出場の話が出た時、「おれなんかでいいのかな」と思ったという永田さんは、仕事が終わった後に師匠である店長から握り方を教わり、帰宅後は魚について勉強を重ねた。