場所との出会いは、ご縁が大きいと私も思う。神さんたちの新しい厩舎の場所も、何度かの頓挫の末に巡り合った1万3000平米の土地。造園会社の持ち物だった場所で、もともとあった事務所を改装すると、驚くほど理想的な厩舎に仕上がった。
もうすぐここにホースバリュー所属の3頭の馬たちが引っ越してくる。静かで広々とした環境で、「3頭の価値を最大化していきたい」と神さんは意気込む。
「馬と関わることで、幸せになる人をひとりでも増やしたいです。乗馬クラブも、今は厳しい時代。だから、馬と人とが一緒になって、社会にインパクトを与えていかないと、馬も人も生き残っていけない。今やっている事業のほかにも継続性のある仕組みを考えて、いろんな場所で展開していければいいですよね。乗馬のスポーツ少年団だって、ここなら可能かもしれないし……。野馬追も参加者が減るなどの課題があるので、継続していくためにできることを考えていきたい。ここは、馬の価値を生かす事業を切り拓いていく本店を構える場所として、ふさわしい場所だと思っています」(神さん)
南相馬市小高区は、東日本大震災以後5年間は人が住めなくなった場所。だからこそ、今再びこの地に戻って来た人のほか、神さんのように新天地として暮らし、新しい価値をつくろうと精力的に活動している人も多い。「いやあ、周りにすごい人が多くて。いつも刺激をもらっています」と神さん。きっと、彼自身もこの地を元気にする「刺激」のひとりだ。
「馬と触れ合えばみんなハッピーになる」。自信たっぷりに断言する神さんの言葉はなんとも頼もしい。もうすぐ、真新しい厩舎と馬場に人が集い、笑顔が溢れていくだろう。人と動物がタッグを組んでつくる未来を、私も見たい。