未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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南相馬市はもっと"馬のまち"になっていく 馬と一緒の海岸散歩から広がる未来

文= 小野民
写真= 鈴木宇宙
未知の細道 No.259 |25 June 2024
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#7小高区はこれからの土地。新しい厩舎リスタート

2024年5月から運用が始まった新しい馬場(写真は運用前:Horse Value提供)

場所との出会いは、ご縁が大きいと私も思う。神さんたちの新しい厩舎の場所も、何度かの頓挫の末に巡り合った1万3000平米の土地。造園会社の持ち物だった場所で、もともとあった事務所を改装すると、驚くほど理想的な厩舎に仕上がった。

もうすぐここにホースバリュー所属の3頭の馬たちが引っ越してくる。静かで広々とした環境で、「3頭の価値を最大化していきたい」と神さんは意気込む。

「馬と関わることで、幸せになる人をひとりでも増やしたいです。乗馬クラブも、今は厳しい時代。だから、馬と人とが一緒になって、社会にインパクトを与えていかないと、馬も人も生き残っていけない。今やっている事業のほかにも継続性のある仕組みを考えて、いろんな場所で展開していければいいですよね。乗馬のスポーツ少年団だって、ここなら可能かもしれないし……。野馬追も参加者が減るなどの課題があるので、継続していくためにできることを考えていきたい。ここは、馬の価値を生かす事業を切り拓いていく本店を構える場所として、ふさわしい場所だと思っています」(神さん)

取材時は、完成間近だった厩舎

南相馬市小高区は、東日本大震災以後5年間は人が住めなくなった場所。だからこそ、今再びこの地に戻って来た人のほか、神さんのように新天地として暮らし、新しい価値をつくろうと精力的に活動している人も多い。「いやあ、周りにすごい人が多くて。いつも刺激をもらっています」と神さん。きっと、彼自身もこの地を元気にする「刺激」のひとりだ。

「馬と触れ合えばみんなハッピーになる」。自信たっぷりに断言する神さんの言葉はなんとも頼もしい。もうすぐ、真新しい厩舎と馬場に人が集い、笑顔が溢れていくだろう。人と動物がタッグを組んでつくる未来を、私も見たい。

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

南相馬で馬を堪能する1日

最寄りのICから【E6】常磐自動車道「南相馬IC」を下車
午前中に、ホースバリューの「小高うまさんぽ」または「海トレッキング」を体験。ホースバリューの新拠点は、見学自由。

その後静かに過ごすなら「南相馬市博物館」なら、野馬追関連の展示も充実しています。

子どもと遊ぶなら、ホースバリューの拠点がある小高区内にある、屋内遊び場「NIKOパーク」がおすすめ。小高区にはほかに258で紹介された「おれたちの伝承館」や、作家の柳美里さんが店長を務める本屋「フルハウス」も。フルハウスでは、本に囲まれながらランチも食べられる。
Horse Value
南相馬市博物館

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。