思い描いていたのとは少し違うけれど、子どもの頃に夢見た「牧場以外で馬に乗って歩く」を叶えるのなら、娘も一緒にどうだろうと誘ってみることにした。私が夢を見ていた年頃で、動物好きなのだからきっと喜ぶに違いない。
「行く行く。楽しみ」と言いつつ、娘はそんなに詳細なイメージはなかったらしい。当日の集合場所の烏崎海岸に行く前のコンビニで、「さあもうすぐ海に着くよ」と言ったら、「え?海だったの。すごい、どうしよう、キャ?」とテンションが爆上がり、車の中でもソワソワと落ち着かなくなってしまった。
娘は、馬はもとより海という言葉に反応したのだと少しして気がついた。私たち家族が住んでいるのは海なし県のひとつ、山梨県。コロナ禍になる前には毎年海水浴に出かけていたが、間近で海を見るのは4年ぶりともなれば、感動はひとしおのようだ。
車で海岸に近づくと、どんどん霧が立ち込めてきた。あたりは真っ白。幻想的というよりも怖さが勝るほどの景色は、温かい気温と冷たい海水温の差が激しい初夏ならではだそう。十数台の車が駐車場に停まっていて、サーファーもたくさん来ているはずだけど、海まで見渡すことができない。
「キャー」と叫びながら、海に突進していく娘。浜辺で貝を拾っては走って戻ってくるといういかにも体力を消耗しそうな動作を繰り返している。
さて、そこにHorse Valueの深野(ふこうの)聖馬さんが運転する「馬運車」が到着。今回、私たちを乗せてくれるワタリセイユウ君(11歳)通称ワタリンを車から下ろすために鞍をつけるなどの準備を入念に行っていた。