身長130センチの娘にとって、馬の背中の高さに乗るのは怖いのでは? と心配だったが、私より身軽にひょいっとワタリンに飛び乗っていた。動じることなく落ち着いて乗馬するもんだなあと感心して遠くから眺めていたけれど、しばらくしたらワタリンが立ち止まって動かない。
一体どうしたのだろうと近づいてみたら、「寝てますね」と深野さん。「私も眠い」と言いながら娘もまどろんでいる。「小さい子は親と一緒に乗ることも多いのですが、揺れが心地いいのか乗ってすぐに寝ちゃう子もけっこういますよ」とのこと。8才の娘の身体も、やはり野生に近いのだろうと、終了時間を気にして時計を眺めてしまう大人は思う。
たまに立ち止まりながらも、なんとかスタート地点に戻ったワタリン。周りには波乗りを終えて、着替えをするサーファーたち。みんな、馬が通ればふと目を上げて微笑んだり、眺めたりするけれど、あくまで日常にある光景。馬とサーファーの画は、ほかでは見られないものだろう。
体験を終えた娘に感想を尋ねると、こう答えた。
「乗るときはグラグラして怖かったけれど、ちょっと経つと慣れてきた。それよりもドキドキしたのは、足が届かないからワタリセイユウ君のおなかを蹴っちゃわないかということ。バランスが取れるようになってきたら、馬と通じ合っている感じがしたよ。そうなって初めて景色を眺める余裕が出てきたんだけど、海がきれいだったなあ。30分は長いと思っていたのにあっという間だったから、またワタリセイユウ君に会いに来たいな」
「ワタリセイユウ君またね」と最後まで律儀にフルネーム呼びを崩さない娘に見送られて、深野さんとワタリンは馬運車へ。その後、私たちは車で厩舎へ向かい、ホースバリュー代表、神瑛一郎さんの話を聞きに行った。