「自家製ミルクで加工品をつくりたい」という夢が一気に現実的になったのは、1991年。牛の品評会で北海道を訪れたことがきっかけだった。
品評会が終わり、会場のお土産コーナーを物色していると、アイスクリームを作ることができる小型のフリーザーが目に留まった。銀色の見た目で、モーターで動く簡易的なもの。松原さんは「おっかぁ(妻)へのお土産に」と購入した。
お土産を喜んだ妻・たみえさんは、自家製ミルクを使ってアイスクリームを作り、家族に振る舞った。
これが、「想像以上にうまかった」のだ。
最初は思うような味にならなかったものの、ミルクの配分を変えながら試作を繰り返すうちに、どんどん味がよくなっていった。
アイスクリームを食べた小学生の息子が喜んだのを見て、息子が所属するスポーツ少年団にも差し入れした。すると、子どもたちが口々に言う。「おいしい!!」
その時思った。「子どもは正直だべな。このアイスは悪くねぇんだ」。
松原さんは「子どもたちの反応を信用して、ジェラート店を開くと決めたんだ」と笑う。
土地を整備して、厨房をつくって、たみえさんを中心にレシピを開発して......初めてアイスクリームをつくった日から10年。
酪農経営を長男に引き継ぎ、松原さんが松ぼっくりを開業したのは2001年のこと。