未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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「客こないよ」と言われた店が年間20万人の目的地に 町の景色を変えたジェラート屋「松ぼっくり」の物語

文= 白石果林
写真= 白石果林
未知の細道 No.256 |10 May 2024
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#7ジェラート店が「まちおこし」につながる

松ぼっくり周辺は、今でこそ飲食店が数軒立ち並ぶが、開業当時はなにもなく「不気味なくらい薄暗かった」。

「こんなところに客が来るのか? と不安はあったよ。米や野菜と違って、ジェラート屋はお客さんが来てくれなきゃどうにもならないからな。周りからも言われたよ。『客こないよ』って」

だがその不安は杞憂だった。開店当初から客は途切れず、初年度の来客数は年間4万人。

大々的な広告は打ち出していないが、珍しさから地元のラジオやテレビの取材が入ったことも大きい。平日でも、どんなに大吹雪の日でも、「お客さんが来なくて困った」と感じたことはない。

「自家製ミルクでジェラートを作るなんて当時はなかったから、珍しかったんじゃねぇかなあ。それに近くにスキー場があったからな、冬でも若い子が来てくれたんだ。あとはやっぱり味だろうなあ。雫石の素材の味を際立たせたいから、多少高くても良い原材料を使ってるんだ」

飛ぶ鳥も落とす勢いで客は増え、わずか4年で年間来客数15万人、販売額約4270万円を達成した。気づけば経営の柱になっていた。

松ぼっくりができて、雫石町に多くの人が訪れるようになった。予想外だったのは、ほかの住民たちも店を開き始めたことだ。蕎麦屋、ピザ屋、喫茶店......ぽつりぽつりと、まちにあかりが灯っていくようだった。

「ジェラート屋がまちおこしのきっかけになったんですね」と言うと、「まあ、かっこよく言えばな」と松原さんは照れくさそうに笑った。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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