開業から23年。今も客足は増え続けている。松原さんの手によって少しずつ変わっていく景色が、客を呼んでいるのだ。
つくってから10年が経つカラマツ林の遊歩道では、今日も若いカップルが写真を撮っている。このカラマツは、松原さんの父親が60年以上前に植林したものだ。
「昔は林業も農家の大切な仕事だったんだ。親父は自分で切り出した木で家を建てたりしてた。だから、長く使おうって大切にしてたなぁ。親父の姿を見ていたから、木の切り方はわかるんだ。なるべく自然を壊さないように、できるだけ木を切らないようにしたんだよ」
遊歩道のアイデアが閃いた当初はタバコやゴミのポイ捨てによる自然への悪影響を懸念して思いとどまっていたが、それでも切り拓いたのは、訪れる人に雫石の豊かな自然を知って欲しいからだ。
カラマツは季節によって表情を変える。春にはみずみずしい新緑、夏の終わりから黄色く色づき始め、秋にはまぶしいオレンジ色の葉をつける。冬になり葉が落ちても、背の高いカラマツを見上げると、隙間から青空がのぞく。
あたりには、お店のシンボルでもある松ぼっくりが、カラマツから落ちてコロコロと転がっている。