「うちだけにこんなにお客さんが来るのが、なんだかもったいなくてな」と、敷地内に地元農産物の直売所「松の実」をつくったのは開店から3年後の2004年。
今では40を超える農家と契約している。年間で出荷者1人当たり平均100万円、最高300万円の売り上げがあるという。
午前中に売り切れることも多く、私が入店した15時頃には、ほとんどの品物がなくなっていた。
「農家の人たちが研究してつくった、いろんな種類の野菜があるんだ。80歳のおばあちゃんが栽培して、自分の名前をつけたお茶とかな。最高齢だと90歳だったかなあ。地域の人たちにとって現金収入にもなるし、みんな『楽しくなった』と張り切ってくれるんだ」
若手から高齢者まで参加する農家の直売所は、「あの品種の栽培時期どうする?」「この品種はまだやってないからやってみっか」と活発な意見が飛び交う場にもなったそうだ。
現在松原さんは、酪農、ジェラート店、直売所の経営を自身の家族を含めた従業員8名で回している。もともとは人通りさえなかった場所を活性化させ、さらに雇用まで生み出した。
これまでの取り組みが認められて、松原さんは2014年に「日本農業賞」、2023年に「大日本農会農事功績表彰緑白綬有功章」を受賞(章)した。