約束の時間まで、まだ2時間もある。私は列に並び、14種類のジェラートが並ぶショーケースを眺めた。
「ミルク」「ブルーベリー」「ヨーグルト」「さくら」「わさび」「玄米」......わさび、玄米!? あまり見ないラインナップに興味がそそられる。
夏には枝豆やトマト、秋には栗やくるみ、冬にはしょうが、焼き芋など。50を超えるレシピは、変わり種ながら季節の味覚を楽しめると評判だ。価格はシングル350円、ダブル420円。
15人ほど並んでいたが回転が早く、待ち時間は10分ほど。券売機でダブルの券を購入し、店員さんお勧めの玄米とさくらを注文した。
ジェラートを片手に2階のイートインスペースに上がると、赤ちゃんを抱いた家族連れやカップル、高齢者のグループなどがいて、にぎやかだ。絵本が並ぶ本棚があり、子どもがのぞき込んでいた。
窓際の席がちょうど空いたので腰を下ろす。窓の外には、社長の松原久美(まつばら ひさみ)さんが切り拓いたカラマツの遊歩道が広がっている。
絵画のような景色を眺めながら、まずは玄米をひと口。香りづけ程度かなと予想したのだが見事に裏切られた。想像以上に玄米が香ばしく、プチプチとした食感が口の中で主張する。後味には、ミルクのまろやかさが広がった。
続いて、さくらのアイス。頬張ってすぐ、「うまっ」とつぶやいてしまった。鼻先でヒラヒラと桜が舞っているかのように香り高い。
ふたつともあとに残らないすっきりとした甘味で、のどにまとわりつくもったりとした感じがない。濃厚ながらあっさりと食べられるのは、搾りたての生乳ならではの旨みだろう。