未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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「客こないよ」と言われた店が年間20万人の目的地に 町の景色を変えたジェラート屋「松ぼっくり」の物語

文= 白石果林
写真= 白石果林
未知の細道 No.256 |10 May 2024
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#2わさびに玄米......!? 雫石の素材を楽しめるレシピは50超

約束の時間まで、まだ2時間もある。私は列に並び、14種類のジェラートが並ぶショーケースを眺めた。

「ミルク」「ブルーベリー」「ヨーグルト」「さくら」「わさび」「玄米」......わさび、玄米!? あまり見ないラインナップに興味がそそられる。

夏には枝豆やトマト、秋には栗やくるみ、冬にはしょうが、焼き芋など。50を超えるレシピは、変わり種ながら季節の味覚を楽しめると評判だ。価格はシングル350円、ダブル420円。

15人ほど並んでいたが回転が早く、待ち時間は10分ほど。券売機でダブルの券を購入し、店員さんお勧めの玄米とさくらを注文した。

カラマツ林の遊歩道には、まだ雪が残っていた

ジェラートを片手に2階のイートインスペースに上がると、赤ちゃんを抱いた家族連れやカップル、高齢者のグループなどがいて、にぎやかだ。絵本が並ぶ本棚があり、子どもがのぞき込んでいた。

窓際の席がちょうど空いたので腰を下ろす。窓の外には、社長の松原久美(まつばら ひさみ)さんが切り拓いたカラマツの遊歩道が広がっている。

絵画のような景色を眺めながら、まずは玄米をひと口。香りづけ程度かなと予想したのだが見事に裏切られた。想像以上に玄米が香ばしく、プチプチとした食感が口の中で主張する。後味には、ミルクのまろやかさが広がった。

続いて、さくらのアイス。頬張ってすぐ、「うまっ」とつぶやいてしまった。鼻先でヒラヒラと桜が舞っているかのように香り高い。

ふたつともあとに残らないすっきりとした甘味で、のどにまとわりつくもったりとした感じがない。濃厚ながらあっさりと食べられるのは、搾りたての生乳ならではの旨みだろう。

色味は薄いが香り高く、素材の味が口いっぱいに広がる
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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