未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
256

「客こないよ」と言われた店が年間20万人の目的地に 町の景色を変えたジェラート屋「松ぼっくり」の物語

文= 白石果林
写真= 白石果林
未知の細道 No.256 |10 May 2024
この記事をはじめから読む

#418歳で米農家の限界を感じ、酪農の道へ

松原さんは1950年、雫石町で生まれた。代々続く米農家の跡取りで、幼い頃から家業を手伝っていた。中学卒業後は、県立浄法寺農場という全寮制の学校で、2年間農業を学んだ。

「小さい時から農家を継ぐように言われていたんだ。都会とか、ネクタイを締めたサラリーマンに憧れたりもしたけど、農家を継ぐことに抵抗はなかったよ」

3ヘクタール(東京ドームの半分程度)しかない田んぼに、経営の限界を感じたのは18歳の時。当時は所有できる田んぼの面積が決められていてなかなか買い足せず、農地を貸し出してくれる農家もほぼなかった。

そのもどかしさのなかで、新しく始めたのが酪農だった。

「1968年に、ホルスタインの育成牛を2頭買ったんだ。父が俺のために準備してくれてね。 周りで牛を飼っている人たちから少しずつ管理の仕方を教えてもらってなぁ。なかには熱心に北海道まで研修に行く人もいたから、一晩中酒を飲みながら情報を仕入れたり、牛の話ばっかりしていたなぁ」

このエントリーをはてなブックマークに追加

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。