せっかくなら誰かと一緒に行くのが楽しそうだと思い立ち、同世代の知人を誘ってみることにした。私の実家は宮城県で、帰省の折に知り合ったカメラマンがいる。たしか栗原市の近くにいたはず。思い浮かんだカメラマンの名は、佐竹歩美さんという。
「一緒に行きませんか? 撮影もしてくれたら嬉しいです」とメッセージを送ると、「運動不足カメラマン“も”行くというコンセプトで」と、私の狙い通りの返事が来て、にやり。ちょっと自信がないことも、仲間がいれば勇気が湧いてくる。そんな経験、実は久しぶりだなと気づいた。
さて、当日のくりこま高原駅。私と佐竹さんのほかは、栗原市のまちおこしに関わっていたり、ちょうど視察に来ていた人だったりが、この日の参加者のようだ。佐竹さんもそのほかの参加者の女性も完全防備の日焼け対策。一方の男性は、なぜかみんな黒いTシャツ。なんだか熱を吸収しそうで心配になる。なぜならこの日も猛暑予想で、ガイド役の一般社団法人 くりはらツーリズムネットワークの大場寿樹さんも、「とにかく無理は禁物。少しでも調子が悪いと思ったらすぐに言ってくださいね」と何度も声をかけてくれていた。
全長13キロのコースを、みんなのペースを見ながら調整しつつ走ってくれるそう。駅前にずらりと並んでいたのは、電動ミニベロといわれる、タイヤホイールが20インチ以下の、乗りやすく小回りがきくタイプのもの。出力のパワーとギアが、それぞれ3段階に切り替えられるようになっている。
「自転車自体が久しぶりの人いますか」との声に、「ほぼ9年ぶりです……」とおずおずと答える私。「ちゃんと練習していきましょう」と漕ぎ出しや止まり方をやってみてから出発となった。
お、意外と乗れるぞ。そう思ったのも束の間、電動の勢いでよろけてしまった。漕ぎ出しが不安定になる。でも、行ったり来たりしているうちに、バランスの取り方を体が思い出してきた。「自転車の乗り方を忘れることはない」昔聞いたそんな話は、本当だったのだと安心した。
目的地は、栗原市サンクチュアリセンターつきだて館(昆虫館)の隣にあるカフェ「ひしの実」。ここで提供されるホットサンドランチ付きの旅程が、トライアルなのだそうだ。おいしいランチが待っていると思うと、意欲も増してくる。