子どもの頃から動物が好きで、インコやウサギを飼っていた吉見さん。故郷の愛知県にある東山動植物園(名古屋市)、名古屋港水族館、のんほいパーク(豊橋総合動植物公園)などによく連れて行ってもらったそうだ。高校生の時、「飼育員になりたい」と専門学校に進学。そこで2年間勉強した後、のぼりべつクマ牧場に入社した。
「最初は和歌山県のアドベンチャーワールドで働きたいなと思っていました。でも、総合職という採用で、飼育員以外の仕事に異動になる可能性もがあると知って。私は飼育員がしたかったので別の職場を探していたら、先生が『のぼりべつクマ牧場が募集しているよ』って教えてくれたんです。私、もともとホッキョクグマが好きだったから、ヒグマもいいなと思って応募しました」
2015年4月、「最初に内定を出してくれた」というのぼりべつクマ牧場に、飼育員として入社。最初の1年間は、仕事をおぼえること、慣れることに必死で瞬く間に月日が過ぎ去った。2年目、少し余裕が出てくると、「飼育環境があまり良くないな」と感じるようになった。お客さんがクマを見学する展示場ではなく、獣舎(餌を食べたり寝る部屋)を見てのことだった。
当時、牧場には約80頭のクマがいて、2つある展示場と4つの放飼場に出るクマ以外は、20ほどある獣舎で過ごすことになる。野生のクマは1日の大半を採食活動に費やしているのに、獣舎ではエサを食べた後のほとんどの時間、ヒマそうに寝そべってゴロゴロするクマばかり。人間に置き換えれば、いかにも不健康だ。これをどうにか改善できないかと思い始めた3年目、同じように飼育環境に違和感を持っていた若手の一部で勉強会を開き、海外のクマに関する飼育マニュアルを読んで少しずつ工夫をするようになった。