未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
232

山形県西置賜郡

山形県の飯豊町で、1年に2カ月だけ現れる「水没林」。そこには空中浮遊感を味わえる幻想的な景色が広がっていた。

文= 川内イオ
写真= 川内イオ/いいでカヌークラブ
未知の細道 No.232 |25 April 2023
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山形県西置賜郡

最寄りのICから【E13】東北中央自動車道「米沢北IC」を下車

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#1森を水没させる雪解け水

見事な朝焼けに思わずため息。

4月某日、朝5時過ぎ。空を赤紫に染める朝焼けのなか、カヌーで湖に漕ぎ出す。出発から間もなくして、幻想的な風景が現れた。

「ここが、一番大きな水没林のエリアです」

普段見ることのない不思議な景色。

そう教えてくれたのは、この日のガイド、いいでカヌークラブの堀江守弘さん。

これが水没林……。湖面から、たくさんの樹が「生えている」。それは違和感のある景色だった。自分が地面から数メートル浮かび上がった感じがする。地上にいたら見上げるような高さにある樹々の枝が、目の前にある。カヌーでその間を抜けていると、空中浮遊しているようだ。

カヌーは安定していて僕のような素人でも簡単に漕げる。(撮影:いいでカヌークラブ)

この日、僕は山形県飯豊町にあるダム湖、白川湖にいた。飯豊町は豪雪地帯で、冬の間3メートルを超える雪が積もる。僕が訪ねた日、白川湖の周囲はまだ真っ白な雪に覆われていて、桜が散った東京とは別世界だった。

この雪が解けるとキャンプ場になるそう。

その大量の雪解け水が白川湖に流れ込み、森に溢れ出す。森は周囲を山に囲まれているから、水瓶のようにどんどん水が溜まる。その水量は尋常じゃなく、堀江さんによると水位が4メートルから6メートルにも達するそうだ。

この水は、雪がなくなると同時に地中に浸透し、あるいはダム湖に吸収されて、5月末には普通の森に戻る。雪解け水が森を満たす3月末から5月末の2カ月間だけ現れるのが、水没林。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
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