山形県西置賜郡
山形県の飯豊町で、1年に2カ月だけ現れる「水没林」。そこには空中浮遊感を味わえる幻想的な景色が広がっていた。
最寄りのICから【E13】東北中央自動車道「米沢北IC」を下車
最寄りのICから【E13】東北中央自動車道「米沢北IC」を下車
4月某日、朝5時過ぎ。空を赤紫に染める朝焼けのなか、カヌーで湖に漕ぎ出す。出発から間もなくして、幻想的な風景が現れた。
「ここが、一番大きな水没林のエリアです」
そう教えてくれたのは、この日のガイド、いいでカヌークラブの堀江守弘さん。
これが水没林……。湖面から、たくさんの樹が「生えている」。それは違和感のある景色だった。自分が地面から数メートル浮かび上がった感じがする。地上にいたら見上げるような高さにある樹々の枝が、目の前にある。カヌーでその間を抜けていると、空中浮遊しているようだ。
この日、僕は山形県飯豊町にあるダム湖、白川湖にいた。飯豊町は豪雪地帯で、冬の間3メートルを超える雪が積もる。僕が訪ねた日、白川湖の周囲はまだ真っ白な雪に覆われていて、桜が散った東京とは別世界だった。
その大量の雪解け水が白川湖に流れ込み、森に溢れ出す。森は周囲を山に囲まれているから、水瓶のようにどんどん水が溜まる。その水量は尋常じゃなく、堀江さんによると水位が4メートルから6メートルにも達するそうだ。
この水は、雪がなくなると同時に地中に浸透し、あるいはダム湖に吸収されて、5月末には普通の森に戻る。雪解け水が森を満たす3月末から5月末の2カ月間だけ現れるのが、水没林。