雪深い飯豊町出身の堀江さんは子どもの頃からスキーに親しみ、宮城県の大学に通っている時、スキーオリエンテーリングという競技を始めた。
「北欧で盛んなクロスカントリーとオリエンテーリングを組み合わせた競技です。大学で先輩から『近いうちにオリンピック種目になる。競技人口が少ないから今からやれば日本代表になれる』と言われて。それから20年以上経ちますが、まだオリンピック種目になっていません(笑)」
先輩の言葉を信じてオリンピックを目指した堀江さんは、学生時代からスキーオリエンテーリングの日本代表として世界選手権やワールドカップに出場。大学卒業後は強豪国のスウェーデンに2年間留学するなど本格的に取り組んだ。日本に戻ってからも都内で働きながら世界を転戦していたというから、本物のアスリートだ。
それでも、引退の時はくる。2017年、35歳で競技生活に別れを告げて「地元を元気にするような仕事をしよう」と飯豊町に戻った。それから飯豊町にホテルを立ち上げたり、レストランを開いたりと忙しく動き回り始めた時に初めて、水没林でカヌーに乗った。
「その日が雨だったんです。それでも水がぽたぽたと落ちて、湖に水紋が広がっていく景色が幻想的だな、別世界だなと思いました。カヌー自体は、スウェーデンでもトレーニングの一環で何度もやったことありましたが、水に沈んだ樹の間を進む感覚は新鮮でしたね」
この時、「この光景を自分たちだけのものにするのはもったいない!」と感じた堀江さんは、アウトドアで活動してきたアスリートとしての経験を活かしてガイドを買って出る。
いいでカヌークラブが水没林カヌーツアーで本格的にお客さんを受け入れるようになったのは、2019年のこと。まだほんの数年しか経っていないうえに、2カ月間しか見られないから、日本でこの絶景を見たことがある人はほんのわずかだ。